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2008年04月29日

京都三日目(暁斎見物と観光)

朝8時半起床。

で、宿で朝飯を済ませ、汚れものや帰りに読まない本を段ボールにまとめて家に送ったのち、河原町から五条の先までぶらぶら歩いて二回目の暁斎見物。今回は、「地獄極楽めぐり」の残り半分(18~35と後1、後2)を重点的に観る。

「地獄極楽めぐり」後半は、「たつ」が、お化粧したり身体に金箔を貼ったりして観音様風におめかししてから地獄に到着。閻魔大王を従え、見世物や曲芸で賑わう地獄の繁華街で遊び、市村竹之丞の芝居(保名)を見物し、閻魔や不動や阿弥陀と宴で大騒ぎしてから地獄見物した挙句、極楽行の汽車で極楽に往生するというめでたい絵物語であった。以下、各々に付けられた題名と覚え書き。

18 たつの身支度 観音様風におめかし ※金箔を貼る
19 亡くなった家族との再会
20 八代目市川団十郎を描く三代豊国(国貞)
21 地獄に到着 ※輿に乗って
22 閻魔大王を従わせる ※観音?と共にたつが地獄に現れ、閻魔大王が土下座でご挨拶
23 見世物や曲芸で賑わう地獄の繁華街
24 芝居小屋へ
25 市村竹之丞の「保名」
26 宴会 閻魔・不動・阿弥陀・たつ
27 地獄見物 衆合地獄
28 地獄見物 焦熱地獄
29 地獄の早飛脚 ※この世に手紙?
30 阿弥陀如来の唱名
31 閻魔大王
32 閻魔大王との別れ
33 遺愛の品々との別れ
34 極楽行きの汽車出発
35 極楽往生 ※たつ、金色に光る
後1 蓮の葉
後2 釈迦と款記

図録にも全点収録されてないのだが、帰りに立ち寄った売店に置いてあった「暁斎全作品集」(20万円超。村上隆が今回の展覧会で買って行ったらしい)をざっと見せていただいたが、モノクロの小さい図版しか収録されていなかった。これ、一冊にまとめて各絵に物語を付けて出したら、売れると思うのだがなあ。どうでしょう。

売店では(暁斎とは関係のない)美人画トランプなどを購入。

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それから六波羅密寺を覗き、祇園をぶらぶら歩ってから、裏寺町の「たつみ」で一服(鶏キモ煮とひじきでビール)。錦小路で万願寺唐辛子(緑と赤)や東京では見かけない茸、そして鱧の落としを購入し、「京極スタンド」でビフカツとキリンスタウト。で、昨日開いていなかった「クンパルシータ」に再トライしたが、どうも店仕舞いした模様。その辺にいる客引きのお兄ちゃん捕まえて尋いてみたら、店主のお婆ちゃんが体調崩して店仕舞いしたとの由。残念。

それからロイヤルビルに潜入して「Small Town Talk」の閉店張り紙を撮影したのち、仕方がないので「Blue Note」で珈琲。その辺の事情などを尋く。

さらにそれから古本屋などを冷やかしつつ、村上開進堂まで上ってみたがここも休みで、諦めて帰ることにする。

新幹線で一瞬気を失ったのち、「地獄極楽めぐり」のストーリーをまとめたりこの記事を書いたりしつつ、カツサンドでビール。

んなことしているうちに、あと小一時間で東京だ。

2008年04月28日

京都二日目

今日月曜日は博物館が休みなので(実は東京を発つ直前に知ったのだが・・・)、京都観光。

まずは怖い怖い絵馬で知られる安井金比羅宮見物。

縁切り縁結びの神社で、そこにかけられる絵馬に書かれた願いも、良縁を望む前にまず悪縁を断ち切るところから始まるものがほとんどである。

ざっと見る限りでは「○○と××の縁が切れますように」という類が圧倒的に多くて、そのバリエーションとしては「夫と愛人が切れますように」や「○○さんが嫁と離婚して私と結ばれますように」などがある。また、自分の息子や娘の悪縁が切れることを望む親御さんが書いた絵馬もある。

また、そのものずばり、「妻と離婚できますように」とだけ書かれた絵馬もあれば、職場での悪縁切り(「○○が辞めますように」や、あるいは職場そのものとの縁切りなど)もあり、そして病や悪習との縁切り祈願もある。

その縁切り祈願の物量感が結構ものすごくて、縁を切りたければ絵馬なぞ書いている間にばっさり切っちゃえばいいじゃねえか、と考える粗雑な坂東者の私としては、この呪というか情念というかの物量感には、かなりくらくらする。

いや、物量感ばかりでなく、鷲田清一「京都の平熱」や入江敦彦「京都人だけが知っている」によれば、「○○さんが奥さんと別れて私と一緒になりますように」と書かれた絵馬に「そうはさせるものか」と上書きされていただの、夫の若い愛人の写真を絵馬に貼りその愛人の顔が見えなくなるくらいに呪いと恨みの言葉がぎっしり書かれていたといった話が紹介されている。そんなの見たら、多分あまりの恐怖にその場で泣いてしまうだろう。

連れ込み宿に包囲されたかのようなロケーションが、またうすら恐ろしい神社である。

といいつつ、絵馬館も見物したかったのだが、残念ながら今日は休み。

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それから京大阪の隠れた名物?の「力餅食堂」

できつねうどんを啜り、五条から京阪本線で、京都と大阪の境界にあり、旧遊郭街として知られる橋本に出て、街並みを見物。かつての粋な(だったろう)街並みが崩れていく様は、とても物悲しい。

駅前にある、この街ただ一軒の食堂である、戦前から続いているという洋食の「やをりき」で、店をおひとりで切り盛りしているお婆ちゃんにいろいろお話を伺う。

貴重なお話を伺えるのだろうと、そのささやかなお礼になればとチキンライス(腹は空いていなかったが、意外に美味かった)を肴にビールを何本か空けながらいろいろ話をしていたのだが、最終的にはその地域の老人問題の話を聞くはめになった。我ながら人がいい?なあ。

まあでも大体、橋本の来し方は理解できた気がする。

お婆ちゃん、大層お元気だが、大正生まれということなので、次に訪れたときにはもう店をやっていないかもしれない、という。ただ、御子息のお嫁さんが跡を継ぐかもしれないとも。

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そのあとも、京都の隠れた情念やエロスや奇矯さの痕が垣間見える孔を捜し歩く、というプランがあったのだが(「京都の平熱」の影響)、ちょっと疲れたのでまた今度にして、結局四条に戻って祇園の辺りをまたふらふら歩いただけで、宿に戻って休憩。それから寺町のキムラですき焼きをつついてから、去年訪れて気に入った「Small Town Talk」という音楽バーを再訪するも、この2月であえなく閉店していた。あまりに良心的な経営が祟ったか。

もう一軒当てにしていたタンゴ喫茶の「クンパルシータ」もお休みで、なんとなく興を殺がれて、早々に宿に戻って本読んだりDVD観たりする。勢いがついてたら、祇園にあるいかにも京都っぽい?名前の「コペルニクス的転回」というバーを覗いてみようと思っていたのだが(これも「京都の平熱」で名前だけ簡単に紹介されていたのだが、今日ぶらぶらしてたら偶然発見した)。

ま、明日はまた朝から暁斎見物なので、うっかり酒を過ごさなくて却ってよかったのかもしれない。

2008年04月27日

没後120年記念 絵画の冒険者 暁斎 Kyosai-近代へ架ける橋-

で、今日は大阪から京都に移動し、京都国立博物館で河鍋暁斎見物。

18歳のときに描いた「毘沙門天像」(1848年)にいきなり舌を巻く。

展示作品数は全135点で、そのうち14点は下絵だが(ちなみに「女人群像」は、本画が所在不明のため下絵のみ展示)、この下絵がまたよくて、会場を5往復くらいしながら、なんかぐったりするほど堪能したなあ。

というわけで疲れたので、詳しい感想は割愛。まあとにかくオススメです。大雑把な感想ですみません。図録(2500円)も300ページ超と、持って帰るのがいやになるくらい充実(しかし、地獄極楽めぐり全点掲載していないのでその分減点)。

何も考えずに旅程を決めたが、ラッキーなことにちょうど展示替えの時期に当たっていたので(今日までが展示期間前期に当たっていた)、明後日もう一度見物に行く予定。

2008年04月26日

西桐玉樹作品店「鶩」

大阪昭和町ギャラリー圓津喜屋にて。

アヒルの絵と女性のポートレートを中心にした個展。お水取りの絵と西桐さんのアトリエに飾っているもの以外の作品をまとめて観たことがなかったのと、今回はギャラリー内で呑み屋(絵酒屋というらしい)をやるというので(なので作品「店」)、遊びに行ってみた。

ちなみに女性のポートレートは、川島紀子とか(笑)、水戸の芸者?とか、なかなかマニアックなモチーフ。面白い。展示は 13点ほどだったが、この個展のために40点くらい描いたそうだ。中には「アヒルを抱く紀子」とか、さらにマニアックなものもあるとの由。その辺観られなくて残念。

ではあるが、結局、どちらかというと絵の鑑賞より呑みに力点が置かれ、和洋折衷の美味い肴が大鉢に盛られているのを適当にもらってワインのグラスを乾しつつ、バカ話をしているうちに、結構へべれけになった。そしてへべれけになった勢いで、2点ほど作品の購入予約をしてしまったような気がする(うち一点は、今回のために作ったカウンターに絵が描かれているのを剝してもらう約束をしたと思う)。払いは大丈夫か。

その後、関係者のひとりが近くにお住いということでそこに上がりこんでまた呑んで、ひと眠りして、深夜天王寺の宿に戻った。深夜の天王寺は、表通りにも割と普通に立ちんぼうの女の人がいて、びっくりしたなー。

2008年04月25日

松田美緒 近江楽堂・生音ライブ with 鬼怒無月

初台オペラシティ内近江楽堂にて。タイトルのとおり、PA機材一切無しの、松田美緒の歌と、鬼怒無月のガットギターのみのライブ。

ポルトガル→カボ・ベルデ→アンゴラ→ブラジル→モザンビーク→日本→アルゼンチン→そしてまたブラジルというお国巡りのような選曲で、ギター一本で歌う松田美緒は、大地に根ざした土と太陽の匂いのする「普遍的な女」としての神々しささえ感じさせる存在感だった(なんて、一晩経って冷静になってから書くと、なんだか気恥ずかしいけれど)。

一番高いところで床から6mくらいのドーム型天井を持つ近江楽堂という空間の素晴らしい音響効果の所為もあるとは思うが、一年近い海外での修行行脚の成果もあるのだろう。また鬼怒無月のギターも凄まじく、歌、ギター、音響が奇跡的な世界を創り出したライブだったように思う。金銭のことをいうのもなんだが、これで3500円の木戸銭だから、ものすごい得した気分であった。この企画は、今後も続けてほしい。

それにしても近江楽堂はいい空間だなあ。こういう空間にベッドと机と本棚だけ置いて、静かに暮らしてみたいものだ。

2008年04月24日

鹿島亭プロデュース公演其の壱・「BANK BANG(!)LESSON」

新宿三丁目・SPACE雑遊にて。

http://ameblo.jp/kashimatei/

主宰の鹿島良太という人は、劇団(劇団偉人舞台)所属ながら、独学で覚えた落語の個人公演活動などをしている人だそうだ。この舞台に、来月劇判を手伝う公演に出演する女優さんが出ているので、観に行った。

原作戯曲は、高橋いさを作で、もうかれこれ20年近く前の作品、いろいろな劇団が様々な公演で採り上げている作品とのことだが、私は寡聞にして知らなかった。

そもそも、幕が開くまでなんの芝居だか知らずに観た次第だが、銀行で、銀行強盗に襲われたときための防犯訓練をするうちに、行員も犯人役も訓練の筋書きをなんだか物足りなく感じ、そこに偶然居合わせた銀行客も加わって、全員次第に演技過剰になり目的を見失って行く、というバカバカしい(褒め言葉です)筋立てを、見事にバカに(これも褒め言葉)に演じ切り、演出し切っていたと思う。

細かい点をいえば切りがないが、大いに笑った。面白かった。半分以上の役の役者が日替わりというのも無駄に面白い試みだし、インディペンデンス?でこういうアチャラカのような新喜劇のようなことをやっているのは、なかなかよいことだと思いました。

大人気のようで、明日金曜日からの残り3日4公演は、すべて売り切れとの由(土日は当日券が出るかもしれない)。

2008年04月23日

四月大歌舞伎二回め

幕見で夜の部の「浮かれ心中」だけ見物。

前回(4/3)より、(アドリブも含めて)だいぶ練れた感じで大変面白かった。

#アドリブといえば、勘三郎が“ちゅう乗り”の際に客席を眺めて知り合いがいたら名前呼んだりするのだが、今日は快楽亭が来ていた模様(あと石川さゆり)。

で、面白かったが、芝居が練れた分、なんで私は不満を感じるのか、その理由もだいたい見当がついた。

あくまでも個人的な感じ方だが、栄次郎(勘三郎)と太助(三津五郎)がもっと爆発的なあるいは痙攣的なあるいは脱力的な笑いを引き起こしたほうが、栄次郎がうっかり殺されてしまうときにつぶやく「茶番は本気に勝てねえのか」という台詞の深さが際立つように思った次第である。

そういう笑いの量、爆発さ加減、多様性が物足りないので、本来バカであるべき栄次郎と太助がなんだか小利口に見えてしまう点が、恐らく私には不満なのだと思う。私はどうも、栄次郎に「湯屋番」や「唐茄子屋政談」「七段目」などの若旦那像を求めたのだと思うが、まあ、それが正解かどうかはわからない。栄次郎はただの若旦那ではなく、あくまでも戯作者なわけだし。

でも、やはり、あの二人の洒落のきつさ、バカバカしさがもっと出て来ないと、という気はどうしてもしてしまった。せめて、「梅屋敷」の絶対に笑わない役人・佐野準之助(彌十郎)が取る笑いのような笑いが欲しいなあ。

その辺、どちらかというと、本とか演出の問題か。うーん、なんかおしい。もっと巻き込まれて面白くなるタイプの芝居のように思うのだがな。

2008年04月18日

パイのパイのパイ

先日来うめ吉をまとめて聴いてて、「パイのパイのパイ」(「蔵出し名曲集〜リローデッド〜」所収)の和声アレンジに舌を巻き、で、今日はようやくあがた森魚の昨年9月発売の新譜「Taruphology」(久保田麻琴プロデュース)を聴いたら、一曲目がなんと「東京節」であった。

知らずに買っていた(そして放置していた)私も間抜けだが、今時代はフライフライフライか? そんなことないか。

そういえば、「Taruphology」リリース記念ライブはチケット買ってたけど時間なくて行けなかったんだよなあ。今さら悔しくなってきた。

いやほんと今さらだが、「百合コレクション」「サブマリン」など懐かしい曲も含みつつ、シランダやコーコ、バイアォン、フォホーなどのブラジルのリズムが心地よい名盤の予感(「白い翼」も演っている)。まだ聴き終わってないので、稲垣足穂感は、まだちょっとよくわからないけれど。

2008年04月15日

CMPSN&Y???

昨夜、カーペンターズのドキュメンタリーDVD「CLOSE TO YOU」付属のブックレットを読んでいたら、次のような記述があってちょっと面白かったので(というか、職業柄、身につまされるというか他山の石?というか人の振り見て~なので)、採録しておく。

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当時(引用者註:70年代前半のこと)ハーモニー主体のグループとしては、ハーパース・ビザール、バーズ、フィフス・ディメンション、クロスビー、ママス&パパス、スティルス、ナッシュ&ヤングなど様々なグループがカリフォルニアを中心に活躍し(後略)
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CMPSN&Y? というか、「クロスビー」とか「スティルス」ってバンドってなんだっけ? と一瞬考えてしまった。

これは恐らく、書いている最中か編集中のドラッグ&ドロップのミスと捉えてよいかしら。または、カーソル位置間違えたまま「ママス&パパス」と入力したのかな?(著者校正時に赤字を入れたが、挿入箇所の指示を書き間違えたか読み間違えた、という線も考えられるか)

まあ、なんか面白いし目くじら立てるつもりはないけれど、そうはいっても間違えちゃいけないところだよなー。

執筆者の運営するホームページ(カーペンターズ関連情報サイトの「http://carpenters4u.net/」)などで訂正記事があるかどうか探したが見当たらなかったので、採り上げてみました。

映像本編は、10年くらい前に発売された作品だし(件の解説は、2004年発売版で書き直されたものらしい)、TVでも放映されているから(多分。見た記憶はあるがこれかどうかは未確認)、ご覧になった方も多いと思うが、ドラムを叩きながら歌うカレンの姿が堪能できてなかなかよかった(デビュー前の「Dancing in the Street」の演奏なども、バンド全体はヘタだけど、可愛らしくかつカッコいい)。ほぼ全曲完奏収録はなし、というのが、諸事情はあるにせよ残念ではあるが、スパイク・ジョーンズ風「Close to You」やホワイトハウスでの演奏など、貴重な映像満載。

2008年04月12日

うめ吉コンサート

大田区民プラザにて。うめ吉についてご存じない方は、↓参照。

http://www.satoh-k.co.jp/ume/

バンド「おてもと社中」入りライブだが、DVD「今昔うたくらべライブ 2006」にも収録された渋谷Duo Music Exchangeのときよりもコンパクトな、フルート/テナーサックス、ウッドベース、ドラムという編成で、不足する音(ピアノ、オルガン、ヴィブラフォン等)は、録音音源で補足するという形態だった(ただしモニターはスピーカーのみで、恐らくガイドなどもないと思われる。ときどき、合わせるのに苦労しているような場面も見受けられた)。

この編成で、民謡、俗曲、昭和歌謡を唄う(むろん、三味線一本で都々逸弾き語り、などもある)。アレンジは、洋楽器編成ながらそれほど奇を衒っているわけではないが(ドラムセットにはお囃子用の締め太鼓が組込まれている)、生演奏部分では主にベースラインでモダンな味わいを加えているという感じか。

ちなみにダンサーの「ことぶきシスターズ」は、この日は4人(上記DVD収録のライブでは6人)。開幕時の踊りのほか、ブギものなど賑やかな曲に華を添える。

さて、うめ吉のパフォーマンスには、大雑把に分けて

a.寄席で観られる三味線一本の俗曲や民謡の弾き語り(もちろん太鼓が入ることもある)
b.この日のようなコンパクトなバンド編成
c.CD「蔵出し名曲集」のようなちょっと先鋭的なビッグバンド編成とリミックス

という形態があるが、本日演ったようなbが、最も広い層に受け入れられるものと思う。

その分、テレビ東京の懐メロ番組を観ているような安心感やゆるさ、温さを感じるステージではあった。元々子供の頃からテレビ東京の懐メロ番組は好きだったので(なぜか市丸が出て来ると嬉しかったなあ)、この形態のステージも非常に楽しい。

また、一見温いステージではあるが、ふと気付くと明治大正昭和と現代とを奇妙にねじって結ぶタイムトンネルを観ているような不思議な気分を味わわされてたりもする(註)。その辺もまた楽しい。

さらに、この形態で各地を回るのは、娯楽興行的にも大変意味のあることだろう。

たとえば、この日は観客の平均年齢も多分70歳を越えているのではという雰囲気だったが、「三味線ブギ」を演する前に「次は市丸お姐さんの・・・」と曲紹介すると、客席がおおー、とどよめくところとか、お年寄りが嬉しそうに「こういうのは若い人向きの企画よねえ」と話しているのを耳にすると、かなりの楽しさを与えているのだろうと実感する。

が、寄席はときどき覗くとして、この感じはそう何度も観なくとも、一回で十分かな。大掛かりなステージ・パフォーマンスについては、次はまた何か新しい試みをするときに観たい。音楽的にも演芸的にも、まだなにか底知れないものがあるように感じているので、民謡や俗曲、昭和歌謡を出発点としていきなり現代を突き抜けてしまうような試みにも、なんとなく期待してしまうのであった。

以下、この日のセットリスト

01 踊り(奴さん、姐さん)
02 おてもやん
03 ストトン節
04 噺家出囃子
 大漁節(歌丸)、金毘羅船々(米丸)、ボタンとリボン(小遊左)
05 地囃子(千鳥)
06 都々逸(三階節アンコ入り)
07 ソーラン節
08 熊本小原節
09 炭坑節
(休憩)
10 踊り(?)
11 土手の柳は
12 倉敷音頭
13 トンコ節
14 東京ブギウギ
15 買い物ブギ
16 三味線ブギ
(アンコール)
17 東京音頭

註:
これはこの日の昼、下丸子駅前の旧いとんかつ屋で食事をとったことも影響している。

古びた建物の入口の引き戸をガラガラと開けると、出迎えるのは店員ではなく三匹のハエ。厨房からではなくあらぬ方向から「いらっしゃいませ」の声がすると思ったら、作業服のような格好の無精髭の店主が客席に寝転んでいて、ガバリと上半身を起こす。

料理が運ばれて来ても、ハエがこちらに飛んで来ず入口付近をぐるぐる回っているのがまたうすら怖い(そこに何かがあるのだろうか)。

尋けば創業80年だというが、昭和の香などという生易しいものではなく、終戦直後の臭いがそのまま感じられるような店だった(いや終戦直後といっても、実際には知らないが)。で、その店内に漂っていた妙に時空のねじれた感じが、うめ吉のステージの鑑賞にも影響を与えたものと思う。

2008年04月10日

新宿末廣亭・四月上席夜の部二回め

月曜日がちょっと不満だったので、今日楽日だしリベンジ。私がリベンジというのもなんか変だが。

で、久々の徹夜明けだったが、昼過ぎには店仕舞いして新宿に出てから隣のビフテキあづまで遅い昼で一杯引っ掛け、昼席の正蔵から観る。正蔵は、去年2007年の初席で観た時と同じ「味噌豆」だった。得意ネタ?

ひろし順子は(もちろん)新展開はないけど、相変わらず面白いなあ。いつ観ても同じネタなのに、なんであんなに客席が湧くのだろう(夜席ののいるこいるも同じく)。

悪天候の昼席なのに、二階が開くまでではないが、末廣亭は満席。落語人気なのか、みんな暇なのか。

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夜席は、見事リベンジを果たした気分。月曜日にこれだけ笑わせてくれたら、もう一度来なくてもよかったのに(笑)。

花緑の弟子だという、変な名前の台所鬼〆が意外に面白く(ネタはなんとなく、白鳥の「マキシム・ド・のん兵衛」と被った感じだったが)、また二つ目昇進という柳家わさびのマクラが、聴きづらく小さな声、非常に変な間の取り方で、大して面白い話題でなくても可笑しい。噺に入ると、だんだん声が出てよくなる一方、普通の落語になって行ったが。

この日の白眉は歌之介で、先日の「かあちゃんのアンカ」はなんだかどっちつかづな気がしてよくわからなかったが、今日のは坂本龍馬に関する短いエピソードを挟みつつの漫談(あるいは昭和天皇や長島の物まねネタ)が、この日一番の爆笑の渦を呼んでいた。坂本龍馬の話からの話題の飛び方の塩梅が、また見事。

あと、たい平の「七段目」も結構印象に残ったな。芝居振りとか、人によってはもっと上手くも演るだろうが、噺全体としてはちょうどいい感じと思った。

そういえば、たい平が高座に上がる前の前座仕事を、何故か林家ペーがやっていた。なんでも、林家ペーが最近落語に目覚め、たい平に相談しに楽屋に来た、ということらしい。特になにをしたというわけではないが、ピンク色を目にしてなんとなくラッキーな気分だ。

それとこの日のハプニング?といえば、下手側の桟敷の最前列にハイティーンの女の子が5人ほど固まって来ていて、すごい楽しそうにケラケラ笑っていて、それだけで寄席の空気が普段と違っていたのが面白かった。川柳など、露骨にそっちだけ向いて演っていて、最後手を振って高座降りてくし。

さらにいえば、この日は一朝の代演で川柳が高座に上がったのだが、圓丈と併せて圓生の弟子が顔を揃えた、というのも、ちょっと面白いか。圓丈は、そろそろ圓生の名前を継ごうとしているとも言われているが、ほんとか。そうえいば古典演ることが多い気もするし、そう思ってなるべく寄席の高座を聴きに行こうとしているのだが(今日はつい先日も聴いたばかりの「ガマの油」だったのでちょっと残念)。

あ、もうひとつ、トリの花緑が高座に上がり、お辞儀をしてマクラを始めた途端に、最前列の真ん中に座っていたおじいちゃんがとつぜん立ち上がり帰って行ってしまったのも、ひとつのハプニング。すーっと風のように去って行く姿が妙に可笑しかったが、花緑はいうまでもなく、かなりショックを受けていた様子。マクラでも延々その話をネタにしていたが、笑い飛ばそうとしつつなんとはなしのオロオロ感が伝わって来た。

それかあらぬか、「唖の釣り」も、うーん、もう少し、という感じと思った。面白かったんだけどなあ、この「もう少し感」はなんだろうか。与太郎がなんだか頭よく見えてしまうところとか、七兵衛が唖になってしまったあとの演技だとか、そんなところなのではないかと思うのだが。

以下、この日の演目。

▼昼席
林家正蔵・・・・・・・味噌豆
あしたひろし順子・・・漫才
林家鉄平・・・・・・・権助魚

▼夜席
鈴々舎やえ馬・・・・・寿限無
台所鬼〆・・・・・・・東北の宿
笑組・・・・・・・・・漫才
柳家わさび・・・・・・狸の鯉
川柳川柳・・・・・・・ガーコン
林家正楽・・・・・・・紙切り
三遊亭白鳥・・・・・・マキシム・ド・のん兵衛
林家彦いち・・・・・・京浜東北線風景
柳家小菊・・・・・・・俗曲
三遊亭歌之介・・・・・爆笑龍馬伝
三遊亭圓丈・・・・・・ガマの油
(仲入り)
柳家さん福・・・・・・だくだく
昭和のいるこいる・・・漫才
柳家権太楼・・・・・・代書屋
林家たい平・・・・・・七段目
翁家和楽社中・・・・・大神楽
柳家花緑・・・・・・・唖の釣り

2008年04月08日

Giulietta Machine in 中目黒・楽屋

年明け1月8日に続いて、今年二度目。

全体的な感想は、前回と同じだが、今回はすこしロックの味わいが濃かったかな、という印象。特にドラムの藤井信雄の演奏が、いつになく若々しくキラキラしてたような気がしているのだが、どうでしょうか。ジャズ界の重鎮ということで、今まで私が勝手に渋いドラムプレイと思っていたからだろうか?

あと、新曲の「桜1(仮)」のイントロのギターのヴォイシングがすごく不思議で印象に残っているのだが、あれはコード表記で表すとどうなるのだろうか(表せない?)。

新曲ももう一曲増え(「桜2(仮)」)、カバーも増え(前回も演った「Eu Sei Que Vou Te Amar」に加えて「Summer Samba」)、ライブ全体を通しての色彩が富んできているようで、さらにいろいろな聴き方、楽しみ方ができるライブになってきたなあと思った。

たとえば、楽曲と音響の組み立てられ方を読み取っていく知的な方面の刺激だったり、あるいは実演奏のニュアンスやカッコよさからいかに自分の心が動かされていくかを味わう感情的な方面の深さだったり。ほかの人の感想も知りたいので、次は誰か連れて行こう。

というわけで、演奏を楽しみながら、酒も大変楽しく進んだ次第だが、ビールあれだけ呑むんだったらワインでもボトルで頼んだほうが安かったとあとで気付いた。酒の売り上げが、バンドのチャージバックにも反映されるならいいんだけど(笑)。

2008年04月07日

新宿末廣亭・四月上席夜の部

彦いち、白鳥、圓丈、たい平、花緑という顔ぶれにちょっと胸躍ったのだが、今日は圓丈はお休みで、それは事前に調べて知っていたが、雨もよいの月曜日だからか? 全体的にちょっと不完全燃焼の印象。

白鳥「好きやねん三郎」は、元々は「江戸前びっくり回転寿司」だと思うが、白鳥ホームページ掲示板への本人の書き込みでは、現在この題名らしい(ただし未確認)。山奥の湯治場からさらに獣道を5時間登ったところに“江戸前”の寿司屋があるという設定で、湯治場の婆さんが客に「寒いから」と言って毛皮を着せる伏線の引っぱり具合とか、名店で修行を積んだという寿司屋の大将が「山の幸を海の幸に見立てる」と胸を張りながらウニ→プリンに醤油、フグ→毒キノコ(痺れるから)みたいな実にいい加減な見立てをする感じなどは面白かったが、このあと鈴本掛け持ちということで、全体にちょっとアシにすーっと演った感じではあった。

彦いち、たい平も面白かったが、今日はたまたま二人とも漫談だったしな。

花緑は、「お見立て」をたっぷり聴かせてくれてよかった。喜瀬川花魁のわがまま振りとその可愛らしさ小憎らしさ、杢兵衛の訛りと田舎者らしい執拗さ、そしてその間に入って困惑しつつも花魁のいうとおりきちんと演技する喜肋の、それぞれの人物像の立たせ方など、かなり上手いし。でも、寄席で聴くと、この人にはいつも、「もう少しできるのでは」と期待してしまうんだよなあ。

というわけで、お目当てに関しては、私の期待はなんだかちょうど外れてしまったような日だったが、圓丈の代演の小袁治「王子の狐」や、一朝「蛙茶番」と権太楼「町内の若い衆」で、それぞれ古典を気持ちよく聴けたのと、あとは和楽社中の大神楽、中でも前座修行を終えて三年目という翁家小花の芸がはらはらさせられつつ(それも演技?)なかなか見事だったので、まあよかった。

以下、この日の演目。

林家彦いち・・・・・・漫談(空手部の先輩との会話)
林家正楽・・・・・・・紙切り
三遊亭白鳥・・・・・・好きやねん三郎
三遊亭歌之介・・・・・母のアンカ
柳家小菊・・・・・・・俗曲
春風亭一朝・・・・・・蛙茶番
柳家小袁治・・・・・・王子の狐
(仲入り)
柳家さん福・・・・・・子ほめ
近藤志げる・・・・・・漫謡(野口雨情物語)
林家たい平・・・・・・漫談
柳家権太楼・・・・・・町内の若い衆
翁家和楽社中・・・・・大神楽
柳家花緑・・・・・・・お見立て

2008年04月05日

桂吉弥のお仕事です。2008 vol.2

浅草見番(浅草三業会館)にて。

NHKの朝ドラ「ちりとてちん」で一躍全国区のスターダムにのし上がった(?)、桂吉弥(吉朝と米朝の弟子)の会。兄弟子だという桂都とんぼが助っ人で、共に二席づつ。

以下、この日の演目。

桂吉弥・・・・・・・・短命
桂都んぼ・・・・・・・餅屋問答
(仲入り)
桂都んぼ・・・・・・・秘伝書
桂吉弥・・・・・・・・愛宕山

ふたりともはじめて観たが、都んぼのほうは、お猿っぽい自分のキャラクターから醸し出されるガチャガチャした味わいをうまく活かしたエネルギッシュな感じの芸ながら、登場人物の演じ分けなどもしっかりしていて(特に餅屋問答のいんちき坊主と旅の雲水など)、なかなか楽しめた。

吉弥は、とてもきれいな芸だなあと思った。余計な入れ事やくすぐりも一切なく、噺の世界をきっちりと構築して行く。その分、「短命」のような阿呆なキャラクターそれ自体が笑いどころの噺だと、爆発的な笑いは生まない。一方「愛宕山」のような、山行き、京都対大阪、かわらけ投げ、小判投げ、傘を背負っての谷底への降下、谷底からの帰還など、いろんな要素が組み合わされた話だと、それぞれの要素の中の笑いを際立たせるような組み立て方がうまく成功していて、次第に笑いの渦が重なって行く。40前とまだ若いのに、大したものだと思う。東京の落語家だと、誰が一番近いだろう。ちょっと思い浮かばなかった。

多分、呑んでも酒だか水だかわからないがいつの間にか気持ちよく酔わせられるような芸を目指しているのかな。一旦限りなく水に近づいてから、少しずつ桂吉弥なりの旨味が染み出してくるとよいと思った。そういう意味では、歳取ってから名人になってるタイプの芸人か。「ちりとてちん」で売れてしまったので、それの悪影響がなければよいな、とは思う。

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ちなみにこの日は―

まず飯田屋で丸(笹がき追加)と蒲焼きで昼酒。それから蛇骨湯に浸かって酔いを抜き、一応まあ観音様にお参りしてから、同行の方々と合流し落語。

で、見番の真裏にある釜飯の「むつみや」の二階座敷で、同行の方々と宴会。神棚があって日本人形が飾ってある旧い日本間で、なんだか親戚の法事のような雰囲気の中、初対面の人も多いので皆で自己紹介等しつつ、煮物、刺し盛りなどで呑んで、〆に走りの筍の釜飯。なんでもないものが普通に美味くて落ち着けるよい店であった。また行きたい。

その後、放し飼い?だがお利口なドーベルマン(註:これは酔っ払いの見間違いで、実際は茶色のレトリバー)と散歩していた地元の人(たまたま話しかけたか話しかけられた人)に連れられ、「注配道場御来屋」でもう一杯。眠くなってしまいここはあまり堪能できなかったが、店のおばちゃんが大変気持ちよく、ひとりでふらっと入れそうな感じもあるので、ここも浅草呑みのレパートリーに加えさせてもらおうと思う。

仕事関係?の友人知人が中心だがお互い初対面の人も多く、実にいろいろな人たちが集まった会だったが、メインの落語の前後も大変楽しい一日でした。感謝。

2008年04月03日

四月大歌舞伎

-昼の部
本朝廿四孝 十種香
熊野(ゆや)
刺青奇偶(いれずみちょうはん)

-夜の部
将軍江戸を去る
歌舞伎十八番の内 勧進帳
浮かれ心中

http://www.kabuki-bito.jp/theaters/kabukiza/2008/04/post_24.html

今月一番いいのは「刺青奇偶」か。玉三郎のお仲のまあ可愛いことったら。そして、お仲が病床で、あたしが死んだらもう博打はやめてねという意見として半太郎(勘三郎)の右腕にサイコロの図柄を彫る場面に漂う、悲しい色気ったらない。死んでいく恋女房のために命を張った勝負に出た半太郎に相対する、仁左衛門の政五郎親分がまたカッコよい。

で、泣かせそうでなかなか素直に泣かせない筋立ての妙味と、それをきちんと味わわせる芝居。開幕二日目にしてすっかり完成されてたような気もするし(破綻や間の悪さがないという点で)、これはオススメ。できれば玉三郎の表情がよく見えるいい席で。

ちなみに、4月がこれで5月の新橋演舞場が「一本刀土俵入」ということで、原作(脚本)読みたくて私はうっかり長谷川伸全集を買ってしまいました。

「将軍江戸を去る」は、徳川慶喜が江戸を去るその瞬間の一歩だけに焦点を当てた芝居と思ったが、どうでしょう。山岡鉄太郎との尊皇勤皇議論とか全部、幕が下りる直前の場面で客の感情を揺さぶるために機能しているように思った。徳川慶喜は、私の先祖がまんざら知らない仲でもないらしいので(慶喜が大阪から江戸に開陽丸という戦艦で脱出?する際、艦長の榎本武揚が不在だったので、副長であるその先祖が指揮を執ったそうな)、なんだかそんな興味でも眺めてみた。

「浮かれ心中」は井上ひさしの原作「手鎖心中」に“ちゅう乗り”を加えたもので、確かに笑いどころが一杯あって面白い芝居なのだが(あと、七之助演じる、金にこすい花魁がなかなか)、間の悪さとか粗さが目立ったなあ。これは(芝居が完成されるであろう)千穐楽近くにもう一度かな。

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