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2009年03月29日

【急告】マダムギター長見順ソロライブ in 渋谷dress

えー、少し前の日記でちょっと書いた、日本を代表する素晴らしい女性ブルースギタリスト・シンガーソングライターの、マダムギターこと長見順さんのソロライブが下記のような詳細で決定しました。

不詳私めが(43年生きてきて、宴会の幹事すらも一度もしたことがないのに)段取りをちょっと手伝ったので、ここに告知させていただきます。

親しくしていただいている方々には、また個別にご案内したり、チラシをお渡ししたりすると思いますが、まずは取り急ぎ。

あ、マダムギターからのメッセージ。

「ギター弾いて唄うだけじゃないの、呑むわよ。あたし、マダムギター。渋谷のディープな酒場に登場だわ。よろしくね。」

では、よろしくお願いします。

長見順オフィシャルサイト

#ライブ詳細↓
★4/26 (日) 渋谷dress

18:00開場 19:00開演
チャージ:2500円(オーダー別)
渋谷区渋谷3-20-15 サエグサビル3階
★渋谷駅から徒歩一分というのにディープなせまい酒場です。要予約制です。
下記のところへ、お名前と人数と予約のムネを〜(まだむより)
予約:電話03-3498-3440
またはAM3.29-chinaboat@ezweb.ne.jpまで
※お手数ですがアドレス頭のAMを小文字に直して下さい。
※なお本公演は長見順サイトおよび青木のほうでの予約受付はしておりません。上記会場(dress)連絡先のみ予約受付となりますので、ご了承ください。

2009年03月28日

渋谷 毅 Essential Ellington + Hideko Shimizu「SONGS」CD発売記念

新宿PIT-INNにて。渋谷 毅(P)、峰 厚介(Ts)、松風紘一(As,Bs,Fl,Cl)、関島岳郎(Tuba)。ゲスト:外山 明(Ds)清水秀子(Vo)。

エリントンの名曲の数々を、こんなにいい感じにまとまっているのにカッコよく破綻してもいるアレンジで、しかも軽々とさりげなく演奏してくれた一夜。もう、いろいろいうことはありません。

といいつついろいろいうけど、12を演り始める前に、渋谷毅が「名曲ばかりで、責任重大ですな」みたいなことを喋っていたが、そういう意味では、これだけ過去の名作への責任をきっちり果たしたライブは、滅多にないかもしれない。

個人的には、打楽器演奏愛好者としては外山明のセット(スルドがバスドラ代わりで、大きく開いたハイハットのトップとクラッシュが接触している)と演奏(左手に持ったカウベルを指で弾きながらドラムスを演奏したり、とつぜん立ち上がって叩いたり、各打点は拍子に全然かっちりはまってないのに音楽的にはぴったりはまってたり)への好奇心と、このアレンジはどうやって成り立っているのだろうという好奇心の、ふたつの音楽的好奇心が先に立っていたのだが、そんな頭でっかちな防波堤があっても、じゅうぶん感動。いやあ、ねえ。

清水秀子の歌唱はもちろん素晴らしく、文句のつけようはないが、まあ高校のときに偶々「Popular Ellington」の録音を集めた変な日本編集のLPを買って以来いろいろちょっとずつエリントンの曲の演奏を聴いてきたからだろうけど、この演奏でエラ・フィッジェラルドが歌うのを聴けたら、というとんでもない妄想をちょっとした。

そこまでひどくない妄想的希望としては、「Perdido」「Black and Tan Fantasy」「In a Sentimental Mood」なども、この流れの生演奏で演ってほしいなあ。

あとは、そう、10が渋谷毅エリントン三部作には収録されていない曲で、ソロピアノで堪能。14も未収録だったか。

ああそうだ、08は最もポピュラーな曲だからか(これらのアレンジの中では)比較的わかりやすいアプローチだったと思うが、バリトンサックスとテナーサックス二本だけのアンサンブルなのに、なんだかビッグバンドの音のように聴こえたのも、忘れないように書いておく。あとあと、06の中盤でホーンと歌がユニゾンで展開するところなどもちょっと震えた。ああ結局いろいろ書いてしまった。

以下、この日のセットリスト(*が清水秀子の歌唱。他はインスト)。

01 East St.Louis Toodle-O
02 Black Beauty
03 Just A Settin' And a-Rockin'
04 I Let A Song Go Out Of My Heart*
05 Prelude To A Kiss*
06 I'm Beginning To See The Light*
07 Do Nothin' Till You Hear From Me*
08 It Don't Mean A Thing*
(休憩)
09 Mighty Like The Blues
10 Don't You Know I Care
11 Passion Flower
12 Mood Indigo
13 Everything But You*
14 Jump For Joy*
15 Caravan*
16 Love You Madly*
17 Sophisticated Lady*
18 Take the "A" Train*
19 Come Sunday*

2009年03月27日

por quilo

西荻窪アケタの店にて。渋谷毅(p)、さがゆき(vo)、小畑和彦(g)、マツモニカ(harm)という顔ぶれでのボサノヴァ・ライブ。ジョビンの曲中心で、最後にミルトン・ナシメント。

変な書き方になるが、触れるか触れないかなのに核心を突いてくる愛撫のような演奏だった。03などでちょっと走り気味になったのも、気になったといえば気になったが、解釈のしようによっては、ちょっと色っぽい気がしないでもない。

いや、もちろんただただ美しい演奏なのであるが、ボサノヴァ=お洒落な、灰汁抜きの効いたバックグラウンドミュージックではなく、ものすごく美しいのに、身近でちょっと下世話なところもあって、そして生命力に溢れているブラジル産の音楽(por quilo=お好み盛り合わせ料理の量り売り、だから、そんな取り方でもいいでしょう?)を楽しませてもらえたので、そんなような感触も、演奏を聴きながら敢えて考えてみた。

うーん、とにかく気持ちよかった。小畑和彦のいい感じにドライブするギターに乗った、さがゆきの歌唱、渋谷毅の控えめだけど鋭く煌めくピアノはもちろん、小畑和彦とマツモニカのソロとすごくいい隠し味的な低音のコーラス、さがゆきと小畑和彦の、あるいはさがゆきとマツモニカの絶妙に火花散る即興のやり取りなど、すべてが美しく得難い。また聴きたいが、今度はいつ演るのかな。肝心なことを尋くの忘れた。

以下、この日のセットリスト(不完全、かつ間違ってるかもしれない。あとで補足)。

01 Este Seu Olhar (Tom Jobim)
02 Corcovado (Tom Jobim)
03 Vivo Sonhando (Tom Jobim)
04 Falando de Amor (Tom Jobim)
05 Desafinado (Tom Jobim, Newton Mendoca)
06 Samba em Preludio (Baden Powell, Vinicius de Moraes)
07 Batucada Surgiu (Marcos Valle)
(休憩)
08 Se Todos Fossem Iguais A Voce (Tom Jobim, Vinicius de Moraes)
09 Chega de Saudade (Tom Jobim, Vinicius de Moraes)
10 Inutil Paisagem (Tom Jobim, Aloiso de Oliveira)
11 Samba do Avião (Tom Jobim, Vinicius de Moraes)
12 Estrada Branca (Tom Jobim, Vinicius de Moraes)
13 Doralice (Tom Jobim, Dorival Caymmi)
14 Vou te Contar (Wave) (Tom Jobim)
15 Travessia (Milton Nascimento)
enc
16 Garota de Ipanema (Tom Jobim, Vinicius de Moraes)

2009年03月26日

パンチの効いたブルース

西荻窪Terraにて。西荻ライブ見物ツアー 3 Daysの二日目。

今日のテーマは、ハート・ブレイク(Graceの)だった。

ハート・ブレイクらしく?、「殴られる人生」の歌い出しを忘れてしまったり、ハート・ブレイク・パワーで機材(ラップスチール)が暫時不調になったりもするが、そうしたトラブルもなんだか笑いとかいい空気に変えていくのが、(パンチの効いた)ブルースである(多分)。

いや、無責任にいうが、演っているご本人たちの日常になにか事件があったほうが、断然面白くなるバンド、音楽だと思う(Graceが日本語で歌った「Alone Again」などは、まさに今日のためのものだった)。その辺、寄席、演芸を楽しんでいるのと同じにおいもちょっとする。

たとえばマダム(長見順)がちょっと暴走して、それをたとえばGraceが「で、どうすんの?」という顔でちょっと眺めつついい感じでフォローするとか、かわいしのぶがまたそれをうまく拾うといったフォーメーションとか、演っている人たちが思わず笑ってしまうのだけどそれが観ているほうも楽しいなども、ライブの度にちょっとずつ味わいが違って面白いし、というような呼吸も、たとえば浅草東洋館の色物のライブ(東京ユニットのコントとか)を観ているのと、楽しさが少し似ている気がした。

いや、今回も楽しいライブでした。「共存のブルース」の、1小節が一体どのくらいの長さなんだというためにためた間の取り方なども、なんだか完成度(というのかな?)が高まってたのもよかったな。

あと、長見順歌唱の際のGrace、かわいしのぶのコーラスの可笑しさが、今回は前回より増している気がした。すごいきれいな声できれいにハモるだけに、たとえば「温泉にゆこう」で「湯、湯〜」とかコーラスしてるのがすごい可笑しい。

以下、この日のセットリスト。

01 あっしにはかかわりのねえことでござんす
02 温泉にゆこう
03 Alone Again
04 殴られる人生
05 守銭奴のうた
06 共存のブルース
07 ラ・ピクニック
08 加藤さんのテーマ
09 舟歌
enc
10 一家離散の唄

---
あ、長見順 in 渋谷bar dressライブ、4/26に決定(不詳私めがコーディネートのようなことをしました)。詳細はまた告知しますが、今現在予定の空いている人は、ぜひ予定に入れておいてください。よろしくお願いします。

bar dress↓
http://www.dress-2f.com/
http://mixi.jp/view_community.pl?id=1311238

2009年03月25日

清水くるみ(p)G

西荻窪アケタの店にて。峰厚介(ts)、是安則克(b)、本田珠也(ds)。

帰途、感想の言葉を考えてて、なんとか「ジャズ」という言葉を使わずに言い表せないかと努めてみたのだが、やはり、「素晴らしいジャズを聴いた」としか言いようがない。そんな演奏だった。

「ジャズ」がなんであるか(まあ、私にとって)については、さすがにこっ恥ずかしいので書かない。

書かないが、せっかくのレディ(清水くるみ)が主役なのだがそれを誰もわざとらしく立てたりしないところとか、それでも勝手に誰にも負けないソロを繰り広げる清水くるみのピアノとか、やはり勝手にカッコいい峰厚介とか、さりげなくとんでもないベースを弾きながら(曲によっては叩きまくりながら)ときおり人の演奏を聴いてニヤニヤしている是安則克とか、特に8曲目でとんでもないドラムソロ(足と口まで使った)を繰り広げた本田珠也などの演奏がきらきら輝くのは、やはりジャズという音楽なのだなあと思った。ならば、ジャズばんざいでいいではないか。

というわけで、今週はなんでんだか私の「西荻 3 days」(ライブ観るだけだけど)となった、記念すべき初日の模様は以上でした。

なお、休憩はさんでアンコール入れて、全9曲。曲名は、2曲目の「セロニアス」と3曲目の「アグリー・ビューティー」(共にセロニアス・モンクの曲)、4曲目の「コンディション・グリーン」(本田珠也の曲)以外はよく聞き取れず不明。一応、1曲目が清水くるみ、休憩後の5曲目がエリントン、7および8曲目が峰厚介の曲、とメモにはあった(6曲目とアンコールが不明)。

2009年03月22日

酒井 俊“Electric Welding Meeting” the second meeting

新宿PIT-INNにて。酒井 俊(Vo)、青木タイセイ(Tb,Key,etc)、太田恵資(el-Vn)、桜井芳樹(G)、松永孝義(el-B)、芳垣安洋(Ds,Per)。会場のホームページでは左記のクレジットだったが、青木タイセイはキーボードのみ演奏(酒井俊の意向との由)。また芳垣安洋もドラムキットのみ。

ベースの松永孝義が生み出すグルーブを基軸に、歌も含めた全員がそこになにかを“溶接”していくというのが主旨のユニットのようで、全体的にはレゲエ、R&Bのフォーマットでの演奏という感じだが(大雑把な印象としては。もちろん、曲によって“フォーマット”は様々である)、そこで紡ぎ出されるグルーブは、松永孝義のベースが中心だからだろう、とにかく軽くて柔らかく、しかし、前にぐいぐい進んでいく音楽ならではの心地よさもある。初期の頃のAnnette Peacockのバンドの演奏を思い出したが、あれよりももっと角がない感じか。なにか温かくていいにおいのする液体に浸かっているような心持ちになった。

酒井俊の歌も、ここのところ続けて聴いた田中信正とのデュオと比べると、肩の力が抜けた感じで、手応えも軽い。もちろん、歌の力強さや重さ(メッセージが伝わる強さや重さという意味での)は変わらないが、表面的な手触りは優しい感じがした。その歌が、上記のような演奏の上で転がっていき、次第にくるまれて馴染んでくる、というのが、このユニットの試みの面白さだろうか。

青木タイセイのキーボードは、ほとんどがエレピの音色だったが*、足りないなにかを足していくというのではなく、逆に余分ななにかを引いていくといった趣き。決して音数が少ないというわけではなく、ソロを取ったりもするし、場面によってはリズムを補う機能も果たすのだが、絵画でいえば、絵の具を厚く塗り足してキャンバスの空間を埋めるのではなく、絵の具は塗るがそれが空間を作ったり光や空気を生み出すという感じだった。このユニットの主旨には、かなり重要な役割を担っていたのではないかと思う。

*08のみ、全編クラビネットの音色だったが、ソロの最中にキーボードの操作パネルの上に置いた譜面が落ちるのを防いだとき、なにかボタンを押し誤ってエレピの音に切り替わってしまうというハプニングがあった。

あと、特に02で顕著だったが、聴き慣れた6/8のリズム中で桜井芳樹と青木タイセイが他の演奏者とは違う(と聴こえた)グルーブでの演奏を試みていて、しかしそれが全体としてははみ出しているわけではない、といったところも、とても面白かった。それは、芳垣安洋のお馴染みの超絶的なドラムにも、太田恵資のさりげなく色彩豊かなヴァイオリンにも、場面場面で同様の感想を抱いた。

個人的にはなにか引っかかりがあるほうが面白いと感じるので、ステージが進むにつれ02のような印象が薄れていくのは少し物足りなくもあり。ただしステージ全体としては、そういう要素もくるみ込む形で、終盤に向かってとてもいい感じに耳障りのよいジャズ-ポップの演奏になっていくのが面白くもあった。

メンバーが大変忙しいということで、頻繁なライブは難しいとのことだが、いい感じにリラックスさせてくれる音楽なので(これを「リラックスさせてくれる音楽」と評することができるのは、大変贅沢なことではある)、定期的に演ってもらえると有り難いと思う。

#03でのメンフィス・ソウルっぽいプレイや、15での土臭いスライドギターなど、桜井芳樹の演奏に感銘を受けたのも、今回の収穫。やはりLonesome StringsのCDは、ちゃんと入手して聴いておこう。

以下、この日のセットリスト。

01 Everyday Will Be Like Holiday
02 What a Wonderful World
03 Crazy Love
04 The Look Of Love
05 Summer Time
06 四丁目の犬
07 ヨイトマケの唄
08 曲名不明
09 I Shall be Released
(休憩)
10 Lean On Me
11 Fragile
12 かくれんぼの空
13 Just Like a Woman
14 Song for You
15 Amazing Grace
16 At Last, I'm Free
17 Hallelujah
18 Wonderful Tonight
enc
19 満月の夕

---
一部、ちょっと言葉が足りない気がしたので、補足。

>そこで紡ぎ出されるグルーブは、松永孝義のベースが中心だからだろう、とにかく軽くて柔らかく

松永孝義はご存知ミュートビートのベーシストだった人だが、ミュートビート時代は、もちろん図太くて重く響くベースを弾いていた(確か、あまりに重く響くので?、ライブに一緒に行った友人が、観ている最中に腹を下して退席した記憶がある)。

今回はその記憶に反して、非常に柔らかく軽やかなベースだったのだが、このライブでは松永孝義がリードする形で演奏が始まり(01はベースイントロ)、そのベースの柔らかく軽やかな手触りに呼応するようにグルーブが育まれていったので、上記のように記した次第。

以上、補足でした。

2009年03月18日

2009春 梅津和時・プチ大仕事@新宿PIT INN第六夜

梅津和時(Sax,Cl)、鬼怒無月(G)、早川岳晴(B)、清水一登(P,Key)、Grace(Ds)、NARGO(Tp)、北原雅彦(Tb)、GAMO(Ts)、谷中 敦(Bs)。ただしGAMOが体調不良で第一部最終曲からの登場となったため、こまっちゃクレズマなどに参加している多田葉子がステージ通してTsをサポート。

大雑把にいえばKIKI Band+スカパラ・ホーンズという感じで、曲もKIKI Bandと梅津和時の作が中心。ただしもちろん、Grace、清水一登の参加が左記の単純な式では収まらない要素になっている。

で、一曲目は、梅津和時がヤヒロトモヒロとともに今年2月に共演したハイチのピアニスト、エディ・プロフィットの曲で、これがカリプソっぽい曲調ながら、PAの所為かはたまた駆け込んだ私の耳の所為か、なんとなく歯切れが悪く聴こえた。このライブも、当日までリハーサルなしだったそうだから、そんな事情も影響していたのかもしれない。

が、続く02(KIKI Bandの曲)がなんともそそるヘビー・ロック?で、Asソロのあと鬼怒無月がソロを取ったのだが、このときのギタートリオ編成のカッコよさったらなかった。ギターソロのあとのホーンの切れも、ぐっとよくなったように聴こえた。この曲のあと、梅津和時がMCで「この曲はGraceの曲になっちゃったなー」と言っていたが、確かにギター、ベース、ドラムが等分に光っていた演奏ながら、ドラムがぐいぐい引っ張ってこそ、という印象も強かったか。

KIKI Bandのメンバー中心だからだろうけど、ロック、プログレ、というのがこの日のキーワードのひとつか。私の偏った耳には、フランク・ザッパのにおいも少し感じられて(特に05のユニゾン使いと、09のピアノソロ部分)、ちょっとにんまりもした。

あとは、04のわざとネジを緩めた感じのファンク/レゲエ、07のエチオピア風?ブギウギの感じなどが印象に残っているが、それ以上に06、09のホーン・アンサンブルの美しさといったらなかった。特に09は、(03同様)このライブのために書き下ろした曲だそうだが、この一夜のためだけ?に書いて、しかもとてもあっさりと終わらせてしまった(多分この夜最短の演奏)のはもったいないと思う。まあ、いずれ何かの機会に再演されるのだろうが、それに出会う機会が私にも訪れんことを、切に願う。

個々の演奏者のことを書き始めるときりがないが、ひとつだけ、鬼怒無月が他の演奏者のソロのときにほんのちょっとした感じで間の手を入れるのだが、それがもう「ここではこうでしかない」的にいちいちはまっていたのには驚くほかなかった。

このメンバーでももちろん、多少形を変えてもいいので、この方向のセッションをまた聴きたい(できれば、間が空いても定期的に)。ホーンはたとえば別のジャズの人たちなどが入っても形にはなると思うが、スカパラ・ホーンズだとやはり華があるから(華ばかりでなく、05のGAMO、06の谷中の渋いソロなども素晴らしかった)、できればこのメンバーでの再演があるといいと思う。

以下、この日のセットリスト(括弧内は作者)。

01 曲名失念(Eddy Prophette)
02 玄武(早川岳晴)
03 負け負け(梅津和時)
04 いかれた地図(早川岳晴)
05 HOT AX(鬼怒無月)
(休憩)
06 平和に生きる権利(Victor Jara)
07 Ethiopia Hagere(Getatchew Mekurya)
08 Tランニング(早川岳晴)
09 ミランダの尾根(梅津和時)
enc
10 ウェスタンピカロ(梅津和時)

2009年03月17日

KONTA(sax etc)+さがゆき(vo etc)

渋谷Bar Issheeにて。完全即興のライブ。KONTAとさがゆきは、この日がまったく初対面で、リハーサルも打ち合わせもなかったそうだ。

20:20頃、ふたりが登場し、KONTAがソプラノサックスを構える。初手はこちらか? と思ったら、なにかが降りて憑いたように、さがゆきが「ツィア~~~~~」と第一声を発した。

この第一声がなかなか衝撃的で、以後しばらく、KONTAがさがを追うような格好で即興が続いたように思う。と、さががテーブルに置いたギターを乱打し始め、それくらいからようやく、ふたりがそれぞれ対等に並立して進む即興演奏が成り立ってきたように思った。このセッションが、概ね10分くらい。

続いてKONTAが楽器を変え、さがも声のほかいろいろなガジェットを用い(ギターの乱打や弦こすりも、20:40頃、22:00頃、22:37頃など何度か繰り返された)、いろいろな音の様相が展開される。必ずしもすごい、面白い、楽しい、びっくり、ばかりではなく、少しあとの出方がわかるような場面もあるし、疑問を感じる場面もあった。

疑問を感じた場面としては、たとえば、第一部の最後(21:00頃)とアンコール(22:45頃)。いずれも三題噺風にお題をもらって展開する即興で、主にお題を言葉や、あるいは楽器による音の模写で表現するような仕方だったが、もっと違った音の産み方で「卒業式、桜、万華鏡」「花粉症、酒、靴下」というお題を取り込んでもよかったのではなかったか。そもそも、寄席の三題噺や紙切りのように、それぞれをきれいに取り込んだり、描写するしたりする必要もないとは思う(漫談的に笑えるところはいくつかあったし、花粉症=くしゃみのサックスによる音模写はなかなか見事ではあった)。

ただし、言葉を用いた即興でも、(リコーダーではない)縦笛を使ったアフリカのどこかの民族音楽を想起させる旋律から、これまたアフリカのどこかのローカル言語を想起させる架空言語での会話→村には医者がいない、という話→医者はいないがカエルの子供が無事生まれた→間違えて「(カエルだから)あるはずのないヘソの尾」を切る→しばらくあやすが持て余してお客にその(架空の)カエルの子を抱かせる・・・、と展開する連想を下敷きにした演奏(21:50頃)は、どこからともなく生まれてくる物語と音響の組み合わせが妙なるものだったのだろうか、10分近い間、素直に楽しかったから、言葉を用いてはいけない、ということではない。要は、それぞれの局面がどう個々人の琴線に触れたかというだけのことか。

そうえいば、まったくどう展開するかわからない即興演奏が続けられる中で、MCの言葉の綾から生まれた「敷地借地」(しきちーしゃくちーしきちーしゃくちー)という言葉のリズムから聴き慣れたようなブルースが展開されたり(22:10頃)、「Tea For Two」をほぼそのまま取り込んだ即興があったりして(22:25頃)、こう来たなら自分はほっとするだろう、と一瞬思うが、実はそんなことはなかった(物足りない気分のほうが強かった)のが、却ってちょっと面白かったということもあった。

総じていうと、私個人は冒頭や21:40頃、あるいは22:37頃の、何かが降りてきて憑いたようなさがゆきの声の即興と、KONTAのサックスの即興の、会話、ぶつかりあい、すれ違い・・・が、最も面白かった次第だが(鳥肌の立つ場面も少なくなかった)、むろん、これはなにか考える基準がほとんどなにもない中での私青木個人の見解に過ぎないわけで、こうした個々の聴衆の感想が、即興演奏に応じて生まれたり消えたりするのも、こうした即興演奏のライブの愉しさなのかな? もうちょっと体験しつつ、また考えてみたい。

ちなみに、サックスほかのKONTAは、バービーボーイズの人。最初にそう書くと、先入見が生まれるかなと思い、最後に書いてみました。

2009年03月15日

鹿の園

春日大社に「鹿苑」という鹿の保護施設があるのは知っていたが、春日大社自体、ずいぶん前に一度立ち寄ったことしかない。今回の旅の終わりに、蕎麦屋を予約した時間までまだ間があったので奈良公園から新薬師寺に向かう途中、春日大社の境内を横切ったときに、この鹿苑が目の端に入り、初めて立ち寄ってみた。

まあ、ぱっと見たところ現代的な普通の建築物でしかなく、特に注目すべき物件ではないようではあった。フェンス越しの遠く向こう、ちょうど正面の反対側に、多数の鹿が、30~40頭くらいはいるだろうか、集まっているようなので、右のほうから裏にも回ってみることにした。

半時計回りで真裏に回り込むと、一匹の歳若い?鹿と目が合った。奈良公園でさんざん鹿とはすれ違っていたので、こちらはあ、鹿だ、くらいにしか思わなかったが、先様の受け取り方はちょっと違ったようだ。なんでここに人間が? といった態で、落差5~6mはあると思われる崖をざざざっと駆け下りて逃げる。そして、崖の下からこちらを見上げている。ただし鹿だから、威嚇するでもなく不審に思う様子でもなく、無表情である。

だから、ちょっと驚かせちゃったか、悪いことしたな、とは思ったが、そう大事とは思わなかった。で、このまま進行方向に回って一周し終えようとしたところ、身体の左側になにがしかの気配を感じる。左を向いてみる。

鹿苑の鹿のすべてがフェンス近くに寄ってきて俺を視ている!

野犬や虎やライオンなら、こちらへの敵意を剥き出しか、あるいは直裁的に襲いかかったりするからわかりやすいが(まあ、わかりやすいといえばだが)、鹿は無表情で黒目勝ちだから却って不気味だ。これだけ数が集まればなおさらだ。口だって、いつだって何かを言いたげなのかそうでないのかが不明確な様子で、ぎゅっと真一文字だ。

そういう、なんというか鹿の黒目を全身に浴びながらこの鹿の園をもう半周する気力が萎えたところで、ふと気付くと頭上では鴉の群れが騒ぎ始めている。たとえば、若い鹿は間諜で、今日の奈良公園の人間共の様子を鹿苑にいる参謀たちに報告に来ていて、そこに闖入者が現れた、ということかもしれない。そんな想像をして平静を保つしか術がなく、もと来た道を引き返して、参道から本殿へと向かった。

その後、なにかしかるべき行いをと思い、といってそれが正しいかどうかはわからないが、春日大社の大小の祠に賽銭を弾んだのはいうまでもない。

それから新薬師寺を訪問し、山を下りて猿沢池の近くに停めてあるクルマに辿り着いたところ、ボンネットには見覚えのない鹿の足跡がまるでなにかの警告のように点々と!

というのはウソで、クルマは無事だったし、玄で蕎麦をおいしく手繰ってから、何事もなく帰っては参りました(いや、名阪国道の魔のSAと呼ばれているところで休憩中、イグニッションキーを紛失して狼狽えたりはしたのだが)。しかし、まだあの無数の黒目は、記憶にはっきりと残っているなー。

追記)
あ、今回気付いたことですが、鹿煎餅を持っていると大勢の鹿がかなり強引に襲って来ることがあるのに、鹿煎餅屋は無事なのはなぜでしょう?

そう思って鹿煎餅屋に注目しながら(注目するなよ)奈良公園や春日大社の境内を歩いていたのですが、店番が留守の鹿煎餅屋台や無人の鹿煎餅販売施設に対しては、鹿はたいへん紳士的な態度なんですよねー。

はっ、鹿の園の秘密にまた気付いてしまったか!

---

今度奈良に行ったときは、ぜひ鹿と鹿煎餅屋がつながっている現場を押さえたいですね。奈良ホテルの一室や江戸三旅館の離れで、和菓子の箱の中にぎっしり入った鹿煎餅が受け渡されている現場とか。

でも、今度こそ消されてしまうかもしれない!

2009年03月14日

酒井俊~“Nights at the Circus vol.1” CD発売記念ライブ 第三夜

渋谷・公園通りクラシックスにて。メンバーは田中信正(p)、太田恵資(vl)、岡部洋一(per)、そして酒井俊が歌。

この日の出色は、個人的な受け取り方ではあるが、03。2曲めまで、音に触れ得るか触れ得ないかぎりぎりのところでの緊張感を保つ形で演奏されたのち、3曲めで早くも、田中信正のピアノが爆発した。そんな構成の妙もあるかもしれないが、ここで心を持って行かれる。なお、この曲での岡部洋一は、小口径スネア(6"か8")の指での演奏から始まり、クライマックスに向けてカホーンでサウンドの底部を支える。また田中のピアノソロに合わせて酒井がフラメンコ様のタップを踏んで出した音も、リズミカルな興奮に花を添えていた。

06のユーモア、笑いの湛え方は、参加メンバーによって毎回表情が変わるのが楽しみだが、太田恵資の参加時は、太田が「オー・ソレ・ミオ」を歌うのが定例のようだ。またこの日は、激しいアッチェレランドもなかなか楽しかった(ちなみに、05ではビリンバウが使われていたが、05の終盤から少しユーモア、笑いの感じが、次の「Banana」への橋渡しのように饗されていたように思う)。

08、エンディングの酒井のロングトーンが美しい。声を張るわけではないぎりぎりのところで、淀みや揺れが一点もないロングトーン。この美しい演奏の締めに相応しい音だったと思う。

休憩後、再び01を今度はリズミカルなアプローチで試みたり、続く10では曲始まりの台詞や曲の終わり方の戸惑いがあり、12のファンク仕様など、リラックスした佇まいがあったのも、この日の印象。

途中、「歌の修復」という言葉が浮かぶ。絵を修復する際、長い年月の間に絵の表面にこびり付いた埃や汚れを丹念に洗い流してから、その絵が本来持っていた色彩を補って行くわけだが(単純に書けば)、もちろん曲によって印象の強弱はあるけれども、酒井俊の作業も同様に、歌にこびり付いた手垢のようなものを洗い落として歌を裸にしたのち、そのしかるべき姿を検討し尽くすという作業で、その結果を我々は目に、耳にしているというような。これもまた、思いつきなので合っているかどうかはわからないが、特に毎回歌われる圧倒的な「Amazing Grace」を聴いて心動かされると、TVなどで日本人が安易に歌う「Amazing Grace」を耳にする度にちょっと不快になる私としては、そう考える。

あとこの日印象に残ったこととしては、岡部洋一の小物の使い方(小口径シンバルをジャンベなどの上に逆さに置いていろんな音を出したり、小さな鈴を落としたり放り投げたり)を備忘として書いておく。それと、新譜リリース記念の特典音源も入手できたこと。

以下、この日のセットリスト。

01 Shenandoah
02 黄金の花
03 かくれんぼの空
04 Angel Eyes
05 Alabama Song
06 Yes, We Have No Bananas!
07 I Shall Be Released
08 My Coloring Book
(休憩)
09 Shenandoah
10 四丁目の犬
11 I Am You
12 買物ブギ
13 The Way We Were
14 At Last I Am Free
15 Amazing Grace
16 Hallelujah
enc
17 ゴンドラの唄
18 満月の夕
19 Love Me Tender

2009年03月07日

潮先郁男(G) +さがゆき(歌)Duo

高円寺サブリエル・カフェにて。

先日(2/10)の新宿あ・うんでのライブの際、「Mona Liza」と「This Love of Mine」で潮先+さがのデュオがあって、その拡大版を聴きたいなと思っていたので、念願叶ったという次第。

で、感想としては「大変楽しかった」としかいいようのないライブであった。曲ごとの歌、演奏のアプローチに大きな変化はないし、音楽的になにか目新しい斬新なことをやるわけでもないが、一曲ごとに楽しく、アンコールまで終わって、満足したような、まだ聴き足りないような。不思議といえば不思議だ。

4/11にも、同じ場所でこの組み合わせのライブを予定しているとの由。多分また、行くと思う。3/30(大塚GRECO)や4/14(新宿あ・うん。共にさがゆき+渋谷毅+潮先郁男)、4/16(四谷ポコタン。さがゆき+潮先郁男+加藤崇之)など、この線上のライブもなんだかこの先目白押しのようだ。

#あ、4/8の大塚GRECO、さがゆき+林正樹(Kokopelli)、ゲストに水谷浩章というのもあった。林正樹は、未聴だが、田中信正と並ぶ天才ピアニスト、という評を目にしたことがあるので、これも気になるな。

以下、この日のセットリスト。

01 Dream a Little Dream of Me
02 Guilty
03 Boy Next Door
04 Go Away Little Boy
05 Somewhere Along the Way
06 Mona Liza
07 In the Small Hours of the Morning
08 My Romance
(休憩)
09 Stuffy
10 Too Late Now
11 Moonlight Becomes You
12 Just You Just Me
13 Nevertheless
14 Crazy He Calls Me
15 For All We Know
16 I'll Be Seeing You
17 Gee Baby Ain't I Good to You
enc
18 Alice Blue Gown

2009年03月06日

酒井俊 “Nights at the Circus vol.1” CD発売記念ライブ 第一夜

入谷なってるハウスにて。ピアノの田中信正とのデュオ。

最初、静かなバラードが多かったこともあり、酒井俊と田中信正の音楽的な集中力が痛いほど伝わってきた。たとえば01や04などは特に、ピアノを鳴らさずに歌のみが漂う箇所が歌唱中にいくつかあるからか、歌の一語一語、ピアノの一音一音、そして無音の間にまで、なにか魂のような透明で軽いがずっしりくるものが篭められているように感じてくる。

一曲終わるごとに、演奏者からなにかそれまで演奏者を支配していたものがふっと抜けていくのがわかるが、それは聴き手側も同じ。それが抜けるごとに、じわじわとやってくる静かな感動の震えに襲われる感じといってよいだろうか。

もちろん、曲によっては違う感慨を持つこともあるのだが、この夜全体を通じて強く印象に残ったのは、上記のような手応えだった。

知っている歌、知らない歌、酒井の歌唱ではじめて知った歌、酒井以外の歌唱で思い入れのある歌と様々だが、いずれもこの時この場での酒井俊の歌という一回限りの体験として、とても深く納得し、心に残ったように思う。それは、たとえば13の歌と歌の合間に故川端民生への想いを語ったように、それぞれの歌ごとに酒井俊がいろいろな想いや風景を持っていて、それが(聴き手には具体的にはなんだかわからないにしても)強く伝わってくるからだろうか。追憶を歌う歌が多いのも、そう感じた所以かもしれない。

田中信正のピアノは、特に10、15、17が顕著だったと思うが、音楽的に高度な挑戦を感じさせつつ、歌が作ろうとしている世界に恐ろしいくらい馴染むことができるものだと感じた。どこでどうやってこんなピアノの表現を会得したのだろう(と、15を聴いている最中のメモに書いてある)。歌の後ろでの和音と歌の合間でのオブリガードといった形で、歌の伴奏という意味では比較的耳に馴染む感じで演奏された02も考え抜かれた深さを感じたし、(これは私の個人的な感覚だと思うが)トラディショナルなピアノのフレーズを一旦ばらばらにしてから組み立て直したような03も見事だった。

酒井俊が書いたものを読んだり、MCを聞いたり、あるいはいただいたメールの文面から、酒井と田中が今日ここに辿り着くまでに5年という歳月があったことは、一応知っている。その間にどういう方法でこの音楽が作られてきたのかには非常に興味があったので、その一端を終演後少しお話したときに伺おうかとも思ったが、止めた。多分、そういう部分の重みも聴き手の想像で個々に補って行くことで、今後の酒井(そして酒井-田中の)音楽の鑑賞の味わいが深くなるのではないかと思ったのだ。

そう思ったのは、もちろん、来週14日の公演通りクラシックス(13日は残念ながら行けない)や、それ以降の公演への期待ということでもある。

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一応、今後興味を持つだろう人のためにデータ的なことを書いておくと、02は照屋林賢、07はレナード・コーエン、08は早川義夫、09は高石ともやの曲。いずれも新譜「Nights at the Circus vol.1」に収録されている(この日のセットリストでは、05と18が新譜に収録されていない曲。05は「夢の名前」、18は「四丁目の犬」などで聴ける)。

以下、この日のセットリスト。

01 Old Black Joe
02 黄金三星~肝にかかてぃ
03 You Are My Sunshine
04 叱られて
05 ヨイトマケの唄
06 Tennessee Waltz
07 Hallelujha
08 君のために
(休憩)
09 初恋
10 Nature Boy
11 かくれんぼの空
12 My Man
13 Alabama Song
14 The Way We Were
15 Crazy Love
16 Wonderful Tonight
enc
17 星影の小径
18 満月の夕べ

2009年03月04日

永井企画・ナガイ「あとみよそわか」

渋谷ギャラリー・ルデコ5Fにて。

「ハイバイ」という人気劇団の若手役者が、演出に挑戦するというシリーズ企画とのこと。私が観た「あとみよそわか」は、永井若葉企画・作・演出。イタチョコ浄瑠璃でもお馴染み?の、高村圭が主演。

http://harumaturi.exblog.jp/

いわゆる演劇的な脚本・台詞やドラマチックな展開ではなく、我々が普段交わしているような日常的な口調の会話だけで舞台を構成して行くという芝居。こういうのを「現代口語演劇」と呼び、平田オリザが始めて90年代に結構流行ったらしいのだが、私はその頃現代演劇にほとんど興味を持っていなかったので、知らなかった。

で、話は二組の家族(共に父母に娘ひとり。片方がそこそこ裕福で、片方が経済的な問題を抱える。娘同士が小学校で同級生)をモチーフとして、それぞれの生活、あるいは二組の交流を、淡々と描いたもの。親子喧嘩、夫婦喧嘩や、気持ちのすれ違い、悪意のない隠し事など、薄暗い要素も描かれるが、それも我々の日常の中で親しんでいる範囲の手応えである。秘密がばれたあとのそれぞれの対応や、喧嘩のあとの気まずさの描き方なども、自分がかつて経験したそれとよく似ていると思わせられる。

つまり、そんなに悪い人はいないけど、なんだかうまく行かないこともあるという、我々が日頃馴染んでいる日常が、ほとんどそのまま(と思えるように)描かれるわけだ。

役者の役作りも素っ気ない感じで、舞台の開始後しばらくは、それぞれの年齢設定が意図的に明確にされていないように思えてしまうほど。見始めてしばらくは、一体なにをどう描きたいのかが判然とせず、これは最後まで観て大丈夫か俺、という気分になるが、みっつめくらいのシーンの片方の家庭での、父親の借金がばれ母親が怒り、父親が食事もせずに夜勤の仕事に出て行く、という辺りから、父、母、娘というパーソナリティがそれぞれ立ち上がってきて、そういう演劇のマジックがわかると、そこから先はそのマジックを楽しく見物することができた。

見終わってからその世界の人や今回の役者、演出家に聞いたところ、そのマジックが口語演劇という芝居の面白さで、演出家は今回それを自分の手でやりたかったということらしい。口語演劇というものを知らなかった私が、その術中にはまっていたのだから、演出の習作としては成功した公演といっていいように思う。

いっそのこと、セットも衣装もなしで、演技だけでそんな演劇のマジックを現出せしめてみるのはどうだろう、と帰り途考えた。絵作りをきちんと行った上で日常を日常のまま切り取ってみたかのように描くなら、映画でもあるわけだし。どうでしょう。もうそんなのはやっているのかな?

2009年03月03日

ひな祭り特別イベント「おとこまえ」

荻窪ルースター・ノースサイドにて。柴草玲とかわいしのぶのユニット「マドモアゼル玲とシノブプレ」の出演イベント。

で、「マドモアゼル玲とシノブプレ」、音楽漫才(と音楽コント、どちらだろう?)としてはすこぶるレベルが高くて可笑しい。柴草玲とかわいしのぶがいきなり「マスクをした不良?女子高生」の格好で登場し、アコーディオンとカリカリカリ・チーンと鳴る楽器(名前を知らない)を鳴らしながら会場をぐるりとひと回りしたのち、絶妙のハーモニーで「昭和枯れすすき」を歌う冒頭から、ぐっと掴まれる。

曲間のMCは、すべて女子高生になり切ったふたりの会話だが、いまどきの女子高生の口調を真似るでもなくしかしどこかその本質をついたような掛け合いの間が、くすくす笑いを持続させ、時折爆笑を誘う。目の付けどころだけで強力に引っ張られてしまうようなかわいしのぶのオリジナル(お腹に虫がいる05、背中にチャックがある06など)がまた、笑いに花を添える。

柴草玲の曲(03、04、11など)もまた、笑いを含みながら、なんというか、女と人生の本質というか、そんなようなものに肉薄しつつ、奏でるピアノと歌、アコーディオンと歌が美しくて鋭い。

斉藤由貴の「卒業」をかわいしのぶが歌って、これもなんだか妙に美しい。それから柴草玲が自分がいかにサゲマンであるかをとても心地よくどろどろと歌う。

そしてアンコールは、美しい柴草玲のピアノをバックに、共演の「夢と書いてホシノとよむ」もステージに上げて「ゴンドラの唄」。ひな祭りの最後に「ゴンドラの唄」というのも、目出たいんだかなんだかわからぬが、普通にみんなで斉唱していたかと思ったら、その背後でかわいしのぶのベースがとつぜんフィードバックを起こし、唄は唄で続くがベースはベースでひっぱたき奏法でさらにノイズが渦を巻いて、ショウは幕。

あー面白かった。これはまた観たい。ネタも結構よく練っていると思うし、なにしろ音楽のスキルが高い点、やはり音楽漫才(音楽コント)として今後も楽しみだ。そんな評価がご本人たちの主旨に合っているかはわからないが、笑いの質量を無理矢理計量してみると、ポカスカジャンと同じかそれ以上に面白いと思った。

共演の「夢と書いて~」は、ピアノ、ギター、ドラムというちょっと変則的なガールズ(といっていいよね?)バンドなのだが、柴草玲とかわいしのぶのファンの人のバンドなのかな? どういう立ち位置なのかよくわからなかったが、ピアノの人が作った「獄中結婚」(獄中結婚したい、と希望を歌う歌)、「肉」(今食べているこの肉はなんの肉だろう、という疑問を歌う歌)の二曲がちょっと面白かったな(「肉」でスライドバーを右手に持ってベースを弾く、というのもなんか可笑しかった)。

以下、「マドモアゼル玲とシノブプレ」のセットリスト。

01 昭和枯れすすき
02 ひな祭り
03 食卓
04 シオツカレ
05 共棲のブルース
06 秘め事
07 カシオ讃歌
08 曲名不明(城南地区の住民に捧げる朗読)
09 曲名不明
10 卒業(斉藤由貴のカバー)
11 サゲマンのタンゴ
enc
12 ゴンドラの唄

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