« 2011年01月 | メイン | 2011年03月 »

2011年02月02日

フリー・インプロヴィゼーション もう一つの展望 vol.19

吉祥寺サウンド・カフェ・ズミにて。

エリック・ティールマンス(パーカッション)、福島青衣子(ハープ)、高岡大祐(テューバ)

書きたいことは山のようにあるが、演奏の順を追って整理してみたい。ただし記憶のみに依るものなので、演奏内容に順番的な誤りはあるかもしれない。

さて、まずはひとりずつのソロ演奏で、高岡大祐のテューバソロから。囁くような小さな音から始まり、気が付くと一台のテューバのいろんな場所からいろんな音が、それぞれ別々のタイミングで鳴っている(高岡大祐本人から発せられる音も含む)。ピストンを押すときに発せられる音も、他の音の連なりにいい具合に律動を加える。そうして紡ぎ出される音々の塩梅に、なんだかとても嬉しい気持ちになる。

続いて福島青衣子は、中部アフリカ・ガボン共和国のハープ様の楽器「ンゴンビ」を演奏(舟状に削った木の幹にガゼルの皮が張ってあり、そこに垂直に刺した木の枝との間に糸が張られている)。ハープ様だから基本的には糸を弾くだけなのだが、3/4音くらいの微妙な音程が出てきて、独特のフレージングに心をくすぐられた。あとでお話を伺ったら、意図的にそうしているのではなくて楽器が古くて調律が合わなくなってきている、とのことだったが、それにしても不思議な響きだったな。

そしてエリック・ティールマンス。自転車の車輪(エリックは「ベルギー製のこの車輪が一番音がいいんだぜ」と言っていた)を床に水平に置いたベースドラムの上に垂直に立て、チェロ用の弓で車輪を鳴らしながら、ベースドラムの皮やリムに当てる当て方を変えて音を鳴らす(ちなみに車輪は、場面によってスポークを弾いたりリムを弾いたり)。そしてそこから、あれだよ、車輪を鳴らして倍音を出しているだけといえばだけなのに、驚くことに旋律や和声すら聴き取れてくるのだ。そして美しい。なんだか超現実的な美が立ち上ってくる瞬間見た気がした。びっくりした。

これはエリック以外のふたりももちろんそうだし、のちのデュオ、トリオでそれらが組合わさって融合して響き合って凄い渦を巻くことになるのだが、普通でない奏法で変わった音を出しながら、面白いねだけでなく、心揺さぶられたり、果ては感動で泣きそうになったりする。あるいは嬉しくなって笑ったり身体が動いたりする。あるいは気持ちよくなって気が遠くなったりする。

音楽というものが生まれたとき、いろんなものを叩いたりこすったり弾いたりしながら、そしてもちろん歌ったりしながら、気持ちのいい音、心震える響きを探して行って、そうしてその中に旋律などの今現在音楽と呼ばれる要素が生まれ、発展して行ったのではないかと推察するが、大きな一回りが完了したのちにその原点をかいま見たような気もした。

さてソロが終わると、それぞれのデュオ、それから休憩後にトリオでの演奏となったが、今となっては記憶が混濁していて、いつ、誰と誰がどんな音を出していたかは、のちのち思い出したらその機会にまた改めて整理したい。

とりあえず、印象に残った部分を書き連ねてみると—

・高岡:祭り囃子のような笛的な音、怪獣映画のサントラのようなフレージング、竹串を朝顔の縁にこすりつけながら出した心かきむしるようなかそけき音、などなど
・福島:ハープのある弦にクリップを取り付けそこを弾く時だけ出るある種宗教的な響き、弦に段ボールを挟んでぴちぴちと弾くような小気味のいい音、金属の棒で弦をこすりながら弾くスライドギターのような奏法、スプーンを使った奏法、ハンディ扇風機の柔らかい羽根で弦をこすり優しい音を出す奏法—ただし非楽音的な用い方ではなくそれを持った左手を巧みに操って各音高の弦を前後(上下か?)し、美しい旋律も奏でる、などなど
・エリック:ベースドラムを手のひらと手の甲で叩く、棒の先についたでかいゴムのボールようなものでこすり皮と胴を響かせる、手に持ったシンバルを竹串のようなもので叩いたりドラムの皮に押し付けたりその上で叩いたり、金属製の小さな深い器にボールを入れて回して転がして皮の上に置く、などなど

結局取り留めがなくなったが、いやとにかく、凄かった。としか言いようがない。のでそれ結論にして筆を擱く。

ところで、会場のお手洗いにいい文句が書いてあったので、書き写しておく。

-
記録されなかった多くのサウンドに心を馳せる・・・
Cherishing many unrecorded sounds
(記憶したのを記録したので、特に英語はあやふや)

Calendar

2014年06月
Sun Mon Tue Wed Thu Fri Sat
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30