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2012年08月10日

浅草演芸ホール8月上席後半昼夜

(初出:Facebook「落語総見」グループ https://www.facebook.com/groups/rakugo99/)

浅草演芸ホール八月上席、楽日を昼夜通して観て来ました。にゅうおいらんず含む昼席は、今回二回目です。

▼昼席
この日は、木戸銭払って入った客でほぼ満席、招待券客が入ると立ち見が出る盛況振り。楽日ということもあるだろうが、客席の反応を見ていると、やはり昇太、ナイツといったTVでお馴染みの顔ぶれ目当てという感じも少しした。

始まってふたりめ、二つ目の滝川鯉斗の印象が、なんとはなしに悪かった。ちょっと力を抜いたような漫談だったが、滑舌も悪いし、笑いどころが伝わってこない。お節介ながら、まだネタを愚直に一所懸命やっているところを見てもらう段階ではないかな、と思った。

続くコント青年団の、国政選挙に立候補志望の青年が、誤って日本共産党ならぬ「日本降参党」を訪ねてしまうというコントは面白かったな。「ボルシェビキじゃなくて三割引」「赤旗じゃなくて白旗」という駄洒落の応酬と、その中にいい間で「革新政党だから、あと出しじゃんけんで80年」みたいな皮肉が効いてくる。時間が足りなくなり最後グダグダのまま高座を降りたが、その辺もまた寄席らしくて楽しい。

とても久し振りに観る北見伸&スティファニーには、キンキキッズと大学の奇術研究会を足して二で割ったような男子二人組が参加していて、新顔? と思ったが、よく考えたらあれは「てじなーにゃ」の山上兄弟であったか。勝手に子供の姿で印象を止めていたので、わからなかった。前後を挟む北見伸の下世話で豪華な芸(お札を増やしたり、美女を剣刺し箱から消したり出したり)の間の一服の清涼剤のような、爽やかなトランプ芸だった。

鶴光は、大金を携えた旅人が山の盗賊の手に落ちる、という点では「鰍沢」みたいだったが、桐生の大店の奉公人が給金を貯め信州の実家の売り払った田畑を買い戻しに行く、その途中で盗賊に間違った道を教えられアジトに連れ込まれるが盗賊の妻に匿われる、が結局バレて金を盗られる、去り際盗賊から獣除けにもらった刀が名刀五郎正宗で、これを売って奪われた以上の金を手にする、という、物語は「鰍沢」と全然異なるものだった。これ、題名はなんというのだろうか? 聴いたことがあるような、ないような。鶴光らしく、随所に入るくだらないギャグと、さらに物語とはまったく関係のないくだらないオチで、割と長くて複雑な話も力を抜いて楽しめた。

小遊三「口入れ屋」は夜ばいの話だが、小遊三の小犯罪者イメージは「笑点」で作られたものとはいえ、こういう噺を演るとやはりぴったりで面白いな。ただしそういうTVでのイメージは最小限、あまりあざとく利用せず、落語本編は語り口と間の妙で、心地よく聴かせてもらえた。高座では噺家としてのいろいろな魅力をそれぞれ控えめに出しつつ古典を楽しませてくれるところは、TVとはまた違うこの人の魅力ではないかと、以前から思っている。

中入り前で特に印象に残ったのは、そんなところ。昇太、ナイツは、やはり一番笑いを取っていたし、もちろん私もかなり笑ったが、昇太のマクラも含めて、特段いつもと違って印象的なところはなかったかな。

観ている最中、三日のときより少し賑やかさが落ち着いた印象があったのだが、それは多分前半の色物の順序に依るもののような気がする。終わってみると、全体的にはやはりお祭りのような、賑やかな、少し浮っついた印象も残る番組であった。

***

さてにゅうおいらんず、楽日ということもあり、バンドとしての一体感やグルーヴ感がかなり増しているように感じた。小遊三のトランペットも実によく鳴っていたし、安定のリズム・セクションは安定以上の音楽的な何かを醸し出していた。

曲目や内容(トークタイムの山梨vs静岡など)は、三日に観たときとほとんど変わってないが(恐らく十日間変えてないだろう)、音楽を聴く楽しさはかなり増していたと思う。今回、二回聴きに行ってよかった。

ちなみにこの日のゲストは、ジャズ・ピアニストの雨宮彩葉。

春風亭昇也・・・・・子ほめ
滝川鯉斗・・・・・・漫談
コント青年団・・・・コント
三遊亭遊喜・・・・・熊の皮
一矢・・・・・・・・相撲漫談
三遊亭遊之介・・・・狸札
三遊亭とん馬・・・・小咄、踊り(奴さん)
ぴろき・・・・・・・ギタレレ漫談
三遊亭右紋・・・・・ばばあん家
柳亭楽輔・・・・・・犬の目
北見伸&スティファニー
・・・・・・・・・・マジック
桂伸乃介・・・・・・真田小僧
春風亭昇太・・・・・権助魚
ナイツ・・・・・・・漫才
笑福亭鶴光・・・・・??
三笑亭笑三・・・・・異母兄弟
ボンボンブラザース・曲芸
三遊亭小遊三・・・・口入れ屋
(中入り)
噺家バンド大喜利 にゅうおいらんず(デキシーライブ演奏)

※曲目、ゲスト以外のメンバーは8月3日と同じなので、割愛。

▼夜席

昼とは打って変わって、地味で渋い印象。客席も昼に比べれば半分くらいだったかな。私は、こういう雰囲気が寄席らしいと思うし、これで外の風が入るような場所なら(といっても、そんなのは末廣亭の二階くらいしかないが)、かなり色濃く夏の夜の寄席の楽しさを味わえたと思う。

この上席の夜の目玉は、瀧川鯉昇のトリで、毎夜45分くらいの長高座を勤めていたとの由。という話は、私はこの日初めて知ったのだが、この日の「佃祭」(マクラが約15分、本編が約30分)も、いろんな物語的滋味を味わわせつつ、適度な笑いや語り口と間のよさですーっと楽しませてくれる、大変結構な一席だった。聴いている最中はふわふわした心地よさだけを感じていたが、その実、知らず知らずにいろいろな感情をいろいろに揉まれていたような気がする。

なお、個人的な話だが、漫才の宮田陽・昇と太神楽の鏡味味千代には今まで馴染みがなかったが、この浅草上席でファンになった。

瀧川鯉ちゃ・・・・・桃太郎
昔昔亭A太郎・・・・罪と罰
宮田章司・・・・・・江戸売り声
瀧川鯉朝・・・・・・置き泥
桂平治・・・・・・・平林
コントD51・・・・コント
桂南なん・・・・・・粗忽長屋
三遊亭笑遊・・・・・弥次郎
松旭斎小天華・・・・マジック
春風亭小柳枝・・・・替わり目
(中入り)
春風亭傳枝・・・・・胴斬り
三遊亭遊雀・・・・・悋気の独楽
宮田陽・昇・・・・・漫才
昔昔亭桃太郎・・・・漫談
鏡味味千代・・・・・太神楽
瀧川鯉昇・・・・・・佃祭

2012年08月03日

浅草演芸ホール8月上席前半昼

(初出:Facebook「落語総見」グループ https://www.facebook.com/groups/rakugo99/)

浅草演芸ホール八月、夏休み特別興行、毎夏恒例のにゅうおいらんずを観に行って参りました(といいつつ、昨年観に行けなかったので、二年振り)。その模様を書いてみました。長い割にあまりまとまりませんでしたが—

夏休み向けのお祭りという空気の所為か? 全体を通して賑やかな感じだった。

あとから考えれば、小南治「不動坊」や右紋「壷算」、伸乃介「千早振る」などは落ち着いた感じだったと思い出すのだけれど(「千早振る」は、「聖者の行進」の旋律で「千早振る〜」と歌う場面があったりしたが)、あと米丸「夢録画」も(噺のバカバカしさとは裏腹に)さすがに枯れた語り口だったけれど、それに小遊三「ん廻し」だって“脱法ドラッグ”などの飛び道具を差し挟みつつ渋い芸だったと思うけれども、観ている最中はみなさんだーっと一定の高めの緊張感のまま走り抜けたなあ、という印象だった。笑いの分量や力強さはかなりのもので、体力的には結構消耗した(もちろん、心地よい消耗)。

前座の昇吾が割と早口で声も高めだったのに、意外にあとあとまで影響されてしまったのかもしれない、という気もする(余談だが、最近の若い人にしてはなんだか妙に噺家顔なのが印象に残った)。もしくは、合間合間の落ち着いた芸のあとに来る躁的な芸の印象に聴く方の記憶が負けてしまったとか。

前座の昇吾に続く小痴楽「まんじゅうこわい」も、「まんじゅうこわい」にしてはやけに熱演といえば熱演だった。今こんなに若い小痴楽に代替わりしてたとは不勉強で知らず、初めて聴きながら、達者なようだし男前だが技術と容姿に溺れて天狗になりやしないか、とお節介ながら考えてた次第だが、家帰ってから調べたら先代(二代目小痴楽、五代目痴楽)の次男とのことだった。桂平治に前座修行に預けられたが寝坊癖を理由に一度破門され、父の門下に(Wiki情報ですが)。なるほど、まあでも、跡継ぎとしては、どこかの大名籍兄弟より将来が楽しみなようには思った。また聴いてみたい。

ああそういえば、案の定、マクラなどでのオリンピックネタは多かったが、こういう話題に対する昇太の破壊力はやはり凄まじかったな。お客の多くは、ごく普通に昔ながらに無邪気にテレビでオリンピック観戦を楽しんでいる方々だと思うが、そこに向けてあれだけオリンピックを身も蓋もなくからかいながら笑いの渦を巻かせるところはすごいなあと、素直に思う(以前正月の高座での、前年末の紅白歌合戦の森進一をさんざん笑ったマクラを聴いたときも、同じように思った)。

オリンピックネタと言えば、宮田陽・昇の漫才の前半がオリンピックネタだったが、同じボケを少しずらしながら繰り返して笑いの渦を作っていくところはなかなかだった。他の色物では、チャーリーカンパニーがお休みだったのが個人的には残念だったが(レオナルド熊のにおいのする芸風が好きなので)、代演の江戸家まねき猫の動物テレフォンショッピングのネタはかなり受けていた。もちろん、ものまねが似ているだけでなく人柄や芸風も明るくテンポもよくて、じっさいかなり面白い。あとから考えると、この辺りから客席が暖まってきたようにも思う。

***

さて中入り後のにゅうおいらんずは、小遊三が疲れていたのか一曲目の「セントルイスブルース」の冒頭から既にトランペット吹かずに休んでたが(曲の途中から復活)、まあその辺のぐだぐだ具合も相変わらず楽しい。ドラムがプロ、ベースが元プロと、リズムが安定して全体をしっかり支えているので、上ものの揺らぐ様の可笑しさが際立って聴こえるのだなあと、聴く度に思う。

二曲目の「リパブリック讃歌」は新曲とのことで、導入部で「オタマジャクシは〜」と歌うのはお約束として、短めの演奏だったが、今後レパートリーに入れるとのこと。「タイガーラグ」のトロンボーンによる虎の声色(昇太曰く「象の鳴き声ではありません。これがトロンボーンの限界です)、「ハロードーリー」の小遊三のサッチモの声色での歌唱、そしてこれまたお約束の「聖者の行進」でのエンディング繰り返し(そして芸人ではないドラム高橋徹がオチを付ける)はお馴染みだが、この辺は何度観ても楽しい。

三遊亭圓雀(クラリネット)が体調不良で今回不参加ということで、浅草ジンタのミーカチントがソプラノサックスで参加。それにこの日はマンハッタン・トランスファーや小曽根真とも共演するテナーサックス奏者の岡崎正典がクラリネットでゲスト参加していた。プロの演奏家の参加は、危うい所で安心感を与えてくれる一方、噺家バンドならではのぐだぐだ感の可笑し味を削いでしまうという印象もあったかな。まあ微妙なところで、敢えてどうこう言うほどの話ではないけれど、抱いた感想のひとつとして記しておく。

三曲演奏したら小遊三と昇太以外は休憩、というのもいつもの進行で、唇を酷使するホーンセクションだけ休みなく喋らされるというのがミソ。その“トークタイム”は、通常のメニュー(落語や演芸)に特別料理(にゅうおいらんず)でお腹いっぱいなのに、さらに特別デザートという感じのお喋りで、この日のここでの山梨vs静岡のネタはかなり可笑しいのだが、これは他の日でも繰り返されるのだろうか。上席後半も一度覗きに行こうと思っているので、その際確認したい。

春風亭昇吾・・・・・子ほめ
柳亭小痴楽・・・・・まんじゅうこわい
鏡味味千代・・・・・太神楽
三遊亭遊史郎・・・・看板のピン
江戸家まねき猫・・・動物ものまね(チャーリーカンパニーの代演)
三遊亭圓丸・・・・・越後屋
桂小南治・・・・・・不動坊
新山真理・・・・・・漫談
三遊亭右紋・・・・・壷算
桂歌春・・・・・・・漫談
林家今丸・・・・・・紙切り
桂伸乃介・・・・・・千早振る
春風亭昇太・・・・・ちりとてちん
宮田陽・昇・・・・・漫才
三遊亭遊三・・・・・あいうえお歌謡曲
桂米丸・・・・・・・夢録画
ボンボンブラザース・曲芸
三遊亭小遊三・・・・ん廻し
(中入り)
噺家バンド大喜利 にゅうおいらんず(デキシーライブ演奏)
-曲目
導入 聖者の行進
01 セントルイスブルース
02 リパブリック讃歌
03 タイガーラグ
(トークタイム)
04 ワシントン広場の夜は更けて
05 ハロードーリー
06 聖者の行進

-メンバー
バンジョー・・・・・三遊亭右紋
ソプラノサックス・・ミーカチント(浅草ジンタ。三遊亭圓雀の代演)
トランペット・・・・三遊亭小遊三
トロンボーン・・・・春風亭昇太
ピアノ・・・・・・・桂伸乃介
ベース・・・・・・・ベン片岡
ドラム・・・・・・・高橋徹

クラリネット・・・・岡崎正典(ゲスト)

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