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浅草演芸ホール8月中席昼夜

浅草演芸ホール八月中席昼『吉例納涼住吉踊り』および夜

とても久し振りに、昼夜通しで見物。10時間座り放しで、尻が痛くなる。

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昼は住吉踊りが目当て。中席昼の出演者が次々に登場する賑やかな、雑な部分もご陽気な踊りで、夏の風情をたっぷりと味わった。色物の人たち(今回は涼風にゃん子金魚、青空遊平かほり、笑組のかずお、花島世津子、江戸家まねき猫など)の、普段とは違う姿が見られるのも楽しい。

今年の住吉踊りの演目は、『伊勢音頭』『奴さん』『お客さん』『幇間』『かっかれ』『ずぼらん』『三社祭』『深川』『かっぽれ』。『三社祭』の三遊亭小円歌の、華やかで大きく勢いのある踊りが見事。あと『幇間』の、若旦那(金原亭駒三)と幇間たちの小芝居や、『かっぽれ』で駒三がなかなか踊り出せず、歌の手助けを頼むと誰もまともに歌ってくれない、という小芝居も楽しかった。出演者が多く(総勢37名だとか)、出番や各場面での役割をメモ/記憶し切れなかったのが心残り。

前段の各高座は、夏祭りの芝居らしく各々軽いネタで賑やかしていくという感じだったが、印象に残ったものを列挙すると—

・笑組の漫才は、客いじりとかずおの歌ネタがかなり可笑しい。歌ネタは、母親と祖母に教わった、という設定の、カニが登場する意味不明な子守唄やいろはにこんぺいとう、鳥の名前を折り込んだ歌をネタにしていたが、かずおの歌がうまいのがまた妙に笑を誘う。

・にゃん子金魚、金魚の頭は“ビアホール”。ベルサイユ宮殿の話題からゴリラ振りへの移行が無駄に鮮やかなのが可笑しかった。

・三遊亭とん馬は、九官鳥の小咄と猿の運転の小咄で大受けしていた。ここから遊平かほりの漫才、三遊亭歌る多『替わり目』、柳家三三の『寿限無』を折り込みつつ落語を説明するような漫談という流れが、昼の前半の白眉だったか。

・歌る多『替わり目』は、女流でよく感じる男(旦那とかお父さんとか)の演技の無理な感じがないのがとてもよい。あと酒の話題で「最近は冷やといわずに常温というそうですね。北の将軍様みたい」というくすぐりがツボにはまった。

・花島世津子は髪型が変わっていた。いつ変わったかは知らないが、パーマ屋のお姐さんみたいな雰囲気になっていた。

・三遊亭吉窓『猫と金魚』から春風亭百栄の漫談、昭和こいる・あした順子の漫才、そして三遊亭歌之介の漫談までの流れも大きな山だった。この回は仲入りが多かったが、通常であれば仲入り前の大きな渦がここだったろうと思う。

・昭和こいる・あした順子は、歌うこいるの頭にハンカチを乗せたり取ったりする度に歌い方が二枚目と三枚目に変わる、というネタが異様に可笑しかった。あした順子は例のプリーツ・プリーズの跳び箱柄ワンピース。相変わらずカッコよい。

・歌之介がいつも何故あれだけ受けるのかは、研究すべきかもしれない。芸風は違えど、客を馬鹿な状態にして笑わずにいられなくしてしまうというのは、師匠圓歌と同質かもしれない、という辺りとか。

・柳家小菊と小円歌は、寄席の高座で共演するのは初めてとの由。『さんさ時雨』と、前座(柳家花どん)の太鼓を交えての出囃子(文楽『野崎』、馬生『鞍馬』、志ん朝『老松』)と、あともう一曲(失念)。手をつないでスキップしながら出てきたのには驚いたが、その出方と同じく、可愛らしくて色気のある高座だった。これはまた見たい。ふたりの三味線の間がときおりずれるのは、まあご愛嬌と思う。

以下、昼席の演目。

-昼席
前座・・・・・・・・間に合わず不明
春雨や雷太・・・・・元犬
古今亭ちよりん・・・やかん
翁家和楽社中・・・・太神楽曲芸
古今亭志ん陽・・・・他行
笑組・・・・・・・・漫才
古今亭菊之丞・・・・初天神
三遊亭金八・・・・・四人癖
(仲入)
すず風にゃん子金魚
 ・・・・・・・・・漫才
初音家左橋・・・・・酢豆腐
三遊亭とん馬・・・・小咄
宝井梅福・・・・・・山内一豊 出世の馬揃い
大空遊平かほり・・・漫才
三遊亭歌る多・・・・替わり目
柳家三三・・・・・・漫談
(仲入り)
花島世津子・・・・・奇術
三遊亭吉窓・・・・・猫と金魚
春風亭百栄・・・・・漫談
昭和こいる・あした順子
 ・・・・・・・・・漫才
三遊亭歌之介・・・・漫談(8/24追記:最後に向けて「感じの芋と竿の違いがわからない」と持ってくこの漫談は、『芋と竿』という題があるらしい)
(仲入り)
春雨や雷蔵・・・・・新聞記事
江戸家まねき猫・・・動物ものまね
鈴々舎馬風・・・・・漫談
(仲入り)
古今亭志ん彌・・・・浮世床
柳家小菊・三遊亭小円歌
 ・・・・・・・・・三味線共演
金原亭駒三・・・・・後生鰻
大喜利・・・・・・・納涼住吉踊り

***

夜は普段から好んで聴いている噺家が多かったのと(鈴本の柳家権太楼・柳家さん喬の芝居に行けなかったのもある)、仲入り前が林家三平、トリが林家正蔵というのがどうなるか、という興味で見た。

まず三平だが、相変わらず噛み勝ちというか、早口が縒れる。そして重たい。重たい車輪を無理に高速回転させているみたいでもある。

そんな感じで立川談志をネタにしたマクラを振ったとたん、非常ベルが鳴る。最初は笑いに転じようとしていたものの、二回三回と鳴るうちにおたおたしている感じが客席にも伝わってきてしまい、聴いてるこちらも落ち着かない。「古典に入るに入れない」と言いつつ(実際古典のネタを用意してきたかは知らないが)、父先代三平、母加代子のネタで様子を探りながら、結局漫談としても起伏がよくわからない塩梅で、最後まで非常ベル(都合四五回鳴った)に潰された格好になった。

仲入り後の小せんや喬太郎と比べてしまうと、非常ベルをうまく笑いに転化できてはいなかったのが残念だが、ただ高座の最中に四回も五回も鳴ったらそれも難しいかなとは思う。そこは同情すべきとは思うが、やはり総体的に、この人の、先代風の明るく軽さのある芸風で行こうとしているようなのに、なんかいつも妙な暗さと重さがあるところ(今回の非常ベルも、鳴る度に焦りが高じる様子が見え、高座が、内容は軽い感じの漫談なのに、少しずつ深刻な空気になっていってしまった)、その食い違いが、今のところ、裏目に出ているように、聴く度に思う。どうかすると、面白い要素にもなると思うのだが。

兄正蔵は『悋気の火の玉』。これがまた、凄みや色気がまったく感じられない、薄〜い感じの『悋気の火の玉』だった。あんまり“落語のにおい”がせず、私は物足りなかったけど、よくいえば“いやな落語臭さがない”“いろんな人が聴きやすい”ということになるのかもしれない。

まあなんたって落語会の若貴だから(って表現は果たして好意的なのか?)、兄弟ともに、今後10年くらい経ったらどうなるかなあという気持ちで聴くようにしようと思うが、やはりどうも、まだまだ贔屓にしたくはならないな。

順序が逆になるが、浅い時間に出た川柳川柳は、ちょっと元気のない様子だった。心配なので、というわけではないが、鈴本の下席昼は観にいってみようと思う。

柳亭市馬『手紙無筆』はいつも通り特に外連味はないが気持ちのよい高座だったが、手紙を読み始めるところで一くさり木遣りのような節を歌ったのがとても心地よかった。

市馬『手紙無筆』もそうだったが、柳家権太楼『町内の若い衆』や柳家さん喬『気の長短』は、若いお客が多かった所為か初めて聴く噺という客が多かったのか、笑いこそ多くはなかったけれど、それが退屈によるものではなく、高座に集中して耳を傾けている様子だということは、最後列に座っていた私にも伝わってきた。市馬、権太楼、さん喬でそういう空気がすっとできるところは、なかなかよい客が集まる機会に出会したのではないかとすら思った(悪い客だと勝手に退屈して、笑わないけどなんだか落ち着かない客席になるということもままあるのである)。

仲入り後の柳家小せん『犬の目』が、一切無駄がないなという高座で笑いを連発させ、これまた見事。小気味がいい。

林家種平『ぼやき酒屋』は、私は大好きな演目だしこの日も(ある程度細部まで知ってる噺なのに)大いに笑ったが、この日の客席とは少し掛け違ったのか、“もずく酢レーニン主義”などの駄洒落の連発も、笑いの連続に結びつくまで結構時間がかかっていた(なお噺は「ソースです」のところまで)。

とはいっても、この『ぼやき酒屋』から柳家小団治『権助芝居』と林家ぺーの漫談と徐々に盛り上げていくところは寄席ならではの楽しさで(林家ペーはいつも通りだったが、浅草を称して「メガロポリス」と言ったのには笑った)、そこから柳家喬太郎『ウルトラのつる』(しかもこんなマニアックなネタで)どかーんと客席を爆発させる流れには、やはり興奮を覚える。『つる』自体は閑雅で退屈なところが値打ちで、反対にそこにつまらなさや物足りなさ、噺自体の粗を見つけてしまったりするが、同じ構造で間をびっしり無駄な知識で埋めたらどうなるか、という発想とその実践には舌を巻かざるを得ない。

先述した早口の問題について言えば、喬太郎は三平に輪をかけての早口だったが、全部聴き取れるし重さや軋みや縒れはないし、ネタの密度に沿った話芸のスピード感がただただ心地よかった。こういうところで比べられてしまう環境でやり続ける以上、やはり精進に期待するよりないのである。

で、喬太郎の大爆笑から三増紋之助の曲独楽の客席の煽りっぷりへの流れも素晴らしく、もうこれ以上ないというくらい客席は暖まったのだが(ぱらぱらと空席のある状況から考えると、あの熱量はすごい)、そこに薄〜い『悋気の火の玉』というオチ。なかなか複雑な気分で、演芸ホールをあとにした。

ちなみに夜席ではSTAP細胞をネタにした人が多かったが、アサダ二世がマジックを始める前に「200回成功しましたから」と言ったのには虚を突かれて笑った。

林家正楽の紙切りは、線香花火を切ったあと、客の注文でこの芝居のときらしい“矢来町(志ん朝)”と、“宝船”“白鳳の土俵入り”“富士山”。

あと各高座以外での印象だが、この夜は(というか夏休みの時期だからか)、中には浴衣をきちんと着付けた、きれいで可愛らしい若い男女のお客が多く、鏡味仙三郎社中の太神楽曲芸やホームランの漫才に涼やかな黄色い声援が飛んでいて、これもまた夏の夜ならではの心地よさを彩っていたように思う。

以下、夜席の演目。

-夜席
三遊亭歌むい(前座)
 ・・・・・・・・・桃太郎
林家はな平・・・・・牛ほめ
川柳川柳・・・・・・パフィーde甲子園
アサダ二世・・・・・マジック
林家鉄平・・・・・・寄合酒
鏡味仙三郎社中・・・太神楽曲芸
柳亭市馬・・・・・・手紙無筆
ホームラン・・・・・漫才
柳家権太楼・・・・・町内の若い衆
柳家さん喬・・・・・気の長短
林家正楽・・・・・・紙切り
林家三平・・・・・・漫談
(仲入り)
柳家小せん・・・・・犬の目
翁家勝丸・・・・・・太神楽曲芸
林家種平・・・・・・ぼやき酒屋
柳家小団治・・・・・権助芝居
林家ぺー・・・・・・漫談と『ペーパー夫婦節』
柳家喬太郎・・・・・ウルトラのつる
三増紋之助・・・・・曲独楽
林家正蔵・・・・・・悋気の火の玉

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